オペアンプ

オペアンプの入力インピーダンスが高い理由と出力インピーダンスが低い理由

オペアンプの入力インピーダンスと出力インピーダンス

    • オペアンプの入力インピーダンスと出力インピーダンスって何?
    • 入力インピーダンスは高い方が良い理由はなんですか?
    • 出力インピーダンスは低い方が良い理由はなんですか?
    • 反転増幅回路の入力インピーダンスは、オペアンプだけのときと違うのですか?

こんな質問にお答えします。

 

本記事を書いている私は、10年ほど電子回路設計の仕事をしています。

オペアンプでは、入力インピーダンスは高い方が良いとか、出力インピーダンスは低い方が良いとか、言います。

 

新人の頃、

入力インピーダンス?出力インピーダンス?高い?低い?一体、何のことやら・・・?

という時期がありました。

 

今では学習と仕事を通じで理解できるようになりましたので、分かりやすく解説します。

 

本記事を読めば、オペアンプの入力インピーダンスと出力インピーダンス、それらの「高い方が良い理由」あるいは「低い方が良い理由」を理解することができます。

5分で読めますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

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オペアンプの入力インピーダンスと出力インピーダンス

入力インピーダンス

オペアンプの入力インピーダンスは、抵抗のことです。

 

オペアンプの入力インピーダンス

 

なぜ抵抗のことなのか、単純にオームの法則で考えます。

 

オペアンプの入力インピーダンスの理由

 

オペアンプの入力端子+INと-INの間に、電圧を入力すると、オペアンプには電流が流れます。

電圧を加えると電流が流れるということは、オームの法則で考えると抵抗がありますよね。

電圧 / 電流 = 抵抗

 

この抵抗が、入力インピーダンスです。

 

入力に抵抗があるということは、出力にもあるのでは?と思った方もいるかもしれません。

実はその通りで、出力にも抵抗があります。

それが出力インピーダンスです。

 

 

出力インピーダンス

オペアンプの出力インピーダンス

 

出力インピーダンスは、出力の抵抗です。

なぜ出力に抵抗があるかというと、意図的に抵抗を用意したわけではなく、オペアンプを作るときにできてしまうからです。

本当はなくしたいんですけど、できてしまうんですね。

 

また「出力」なので信号源もあります。5V出したりとか、3V出したりとか。

出力の抵抗は、この信号源と出力端子OUTの間にあります。

 

なぜこの出力抵抗をなくしたいのか?

その理由について解説していきます。

 

 

オペアンプの出力インピーダンスは低い方が良い理由

よく「オペアンプの出力インピーダンスは低い方が良い」と言います。

なぜでしょうか?

 

それは出力の電圧が、抵抗によって下がるからです。

 

オペアンプの出力から5Vを出したいときに、信号源から5Vを出力します。

しかし、出力インピーダンスが大きい・・・、つまり出力の抵抗が大きいと、電流×抵抗の分だけ電圧が下がります。

 

オペアンプの出力インピーダンスの理由

 

例えば出力の抵抗が1kΩで、電流が1mAとします。

すると、オームの法則で、

1kΩ × 1mA = 1V

と計算できるので、
出力電圧OUTは

5V - 1V = 4V

となります。

5Vを出力したいのに、4Vになってしまいました。

 

しかし、出力の抵抗がだったらどうでしょうか?

1Ω × 1mA = 1mV

と計算できるので、
出力電圧OUTは

5V - 1mV = 4.999V

となります。

4.999Vは、ほぼ5Vなので、出力の抵抗が小さいと、ほとんど電圧は下がらないですね。

つまり、出力抵抗が存在することによる影響をほとんど受けないのです。

 

なので、出力の抵抗(出力インピーダンス)は低い方が良いです。

 

また「理想的なオペアンプの出力インピーダンスは0」というのは、これが理由です。

出力の抵抗が0であれば、電圧は全く下がらないですからね。まさに理想的です。

 

 

実際のオペアンプの出力インピーダンスは0ではない

理想的なオペアンプの出力インピーダンスは0ですが、実際のオペアンプの出力インピーダンスは0でありません。

これを言い換えると、理想的なオペアンプの出力に抵抗はありませんが、実際の市販のオペアンプには抵抗があります。

 

しかし、本物の抵抗器があるかというと、そういうわけではありません。

それについて次に解説していきます。

 

 

入力インピーダンスと出力インピーダンスの注意点

オペアンプの入力と出力には抵抗があると解説しましたが、注意点があります。

 

それは、実際の抵抗器があるわけではないということです。

 

実際のオペアンプ内部はもっと複雑な回路で構成されています。

実際のオペアンプの内部回路

図 オペアンプの内部回路

オペアンプの内部回路については本記事では説明しきれないので、詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。

参考記事:オペアンプ内部の等価回路【入力段の動作原理から解説します】

 

では、なぜ「入力と出力に抵抗がある」と考えるのか・・・

それは、オペアンプの入力と出力が接続先に影響するからです。

 

オペアンプの入力と出力の接続

 

オペアンプと接続する部分は、入力と出力だけですよね。

 

入力と出力の抵抗で、

    • この入力インピーダンスの抵抗値なら接続して大丈夫そうだ
    • この出力インピーダンスの抵抗値だとちょっと接続先に影響ありそうだな

と判断するために、入力と出力に抵抗があると考えるのです。

 

そうすればオペアンプを接続するとき、

内部の複雑な回路がどのように接続先に影響するか・・・?

などと、複雑なことを考えなくても、シンプルに抵抗で考えることができます。

 

例えば、オペアンプを2つ接続して考えてみましょう。

1つのオペアンプからすると、もう1つのオペアンプは「接続先」になります。

はたして2つのオペアンプを接続しても、互いのオペアンプに影響はないでしょうか?

次は、それを解説します。

 

 

オペアンプの入力インピーダンスは高い方が良い理由

オペアンプの入力インピーダンス、つまり入力抵抗は高い方が良いです。

なぜなら、接続先に影響を与えないからです。

 

具体的に解説します。

 

以下はオペアンプを2つ接続した図です。

 

2つのオペアンプの接続図

 

左のオペアンプから5Vを出力したとき、右のオペアンプの入力は何Vになるでしょうか?

 

左のオペアンプの出力抵抗を10Ωとし、

右のオペアンプの入力抵抗を1Ω、10Ω、100Ω、1kΩ、10kΩと変化させたとき、

それぞれの場合において、右のオペアンプの入力電圧を求めてみます。

 

求め方はカンタンで、実は出力抵抗と入力抵抗の分圧が、オペアンプの入力電圧になります。

 

2つのオペアンプの抵抗分圧

 

つまり、

オペアンプの入力電圧 = { 入力抵抗 / ( 出力抵抗 + 入力抵抗 ) } × 5V

で求めることができます。

 

実際に求めてみると、

 

入力抵抗 = のとき、

オペアンプの入力電圧
= { 1Ω / ( 10Ω + 1Ω ) } × 5V
= { 1 / 11 }× 5V
0.45V

 

入力抵抗 = 10Ωのとき、

オペアンプの入力電圧
= { 10Ω / ( 10Ω + 10Ω ) } × 5V
= { 10 / 20 }× 5V
2.5V

 

入力抵抗 = 100Ωのとき、

オペアンプの入力電圧
= { 100Ω / ( 10Ω + 100Ω ) } × 5V
= { 100 / 110 }× 5V
4.54V

 

入力抵抗 = 1kΩのとき、

オペアンプの入力電圧
= { 1kΩ / ( 10Ω + 1kΩ ) } × 5V
= { 1000 / 1010 }× 5V
4.95V

 

入力抵抗 = 10kΩのとき、

オペアンプの入力電圧
= { 10kΩ / ( 10Ω + 10kΩ ) } × 5V
= { 10000 / 10010 }× 5V
4.99V

 

となります。

 

これを表にまとめると以下になります。

入力抵抗 オペアンプの入力電圧
0.45V
10Ω 2.5V
100Ω 4.54V
1kΩ 4.94V
10kΩ 4.99V

 

この表をみて、「入力抵抗が低い」と「入力抵抗が高い」は

どちらが接続先のオペアンプ(左のオペアンプ)に影響を与えてないでしょうか?

 

左のオペアンプから5Vを出力しているので、そのまま5Vが入力されていれば影響を与えてないと言えます。

 

そうすると「入力抵抗が高い」方が影響を与えてないですよね。

 

入力抵抗が一番高い10kΩのときは、オペアンプの入力電圧は4.99Vで、ほぼ5Vです。

逆に入力抵抗が一番低い1Ωのときは、オペアンプの入力電圧は0.45Vで、5Vとは全然違う電圧になっています。

 

つまり、入力抵抗が高い方が接続先に影響を与えないので、

オペアンプの入力抵抗(入力インピーダンス)は高い方が良いのです。

 

よくある質問

なぜ接続先に影響を与えないことが重要なのですか?

それは間違った情報を伝えてしまうからです。

 

2つのオペアンプに温度センサも接続してみます。

 

温度センサを接続した2つのオペアンプ

 

温度 電圧
0℃ 0V
10℃ 1V
20℃ 2V
30℃ 3V
40℃ 4V
50℃ 5V

 

上表のように、センサが取得した温度を電圧に割り当てます。

 

左のオペアンプから5Vを出力しているのに、右のオペアンプで3Vが入力されると、

50℃の温度が30℃の温度として伝わってしまいます。

 

全然違う温度として伝わってしまいますね。

 

なので、左のオペアンプから5Vを出力しているなら、右のオペアンプには5Vが入力されるべきなのです。

よって、接続先には影響を与えないことが重要なのです。

 

 

ここまで、オペアンプの入力抵抗(入力インピーダンス)は高い方が良いことを解説しましたが、

実際のオペアンプを使用するときは、回路の一部として使用します。

 

例えば、反転増幅回路があります。

反転増幅回路は、抵抗とオペアンプを組み合わせた回路です。

 

この回路の入力抵抗は、「オペアンプの入力抵抗」と同じでしょうか?

 

結論、違います。

 

次は、その理由を解説していきます。

 

 

反転増幅回路の入力インピーダンスはオペアンプと違う

以下は反転増幅回路です。

 

オペアンプの反転増幅回路

 

この入力抵抗(入出力インピーダンス)は、何でしょうか?

 

その答えは、抵抗R1です。

 

オペアンプだけのときはオペアンプ内部の抵抗でしたが、反転増幅回路だと抵抗R1になります。

 

その理由を解説していきます。

 

オペアンプの出力OUTは抵抗R2を介して、オペアンプの入力に接続されています。

これはネガティブフィードバックです。日本語でいうと負帰還ですね。

 

このネガティブフィードバックによって何が起こるかというと、オペアンプの2つの入力端子+INと-INがバーチャルショートになります。

つまり、同じ電圧になるのです。

 

+IN端子はGND(0V)に接続されているので、-IN端子もGND(0V)になります。

 

よって、、等価的には

 

反転増幅回路の入力インピーダンス

 

ということです。

 

なので、反転増幅回路の入力抵抗は、抵抗R1になります。

 

 

オペアンプの入出力インピーダンスのまとめ

オペアンプの入力インピーダンスと出力インピーダンスについて解説しました。

入力インピーダンスは高い方が良く、出力インピーダンスは低い方が良い理由を理解できたでしょうか?

本記事が少しでもお役に立てば幸いです。

 

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