オペアンプ

オペアンプの種類でよく使われているもの【プロのおすすめIC】

オペアンプの3つの種類

    • オペアンプってどんな種類があるの?
    • よく使われているものを知りたい。
    • おすすめのオペアンプICってなんですか?

こんな質問にお答えします。

 

 

本記事を書いている私は、電子回路設計の仕事をして10年ほどです。

今回はオペアンプの種類とおすすめICについて解説します。

 

よく使われているオペアンプには3つの種類があります。

それぞれに特徴があり、オペアンプを使用するなら、知っておいた方が良いです。

 

また私の経験に基づいて、おすすめのオペアンプICをご紹介します。

 

本記事を読めば、オペアンプにはどんな種類があって、どのオペアンプICがおすすめなのかを知ることができます。

5分で読めますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

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オペアンプの種類

オペアンプの種類で、よく使われているものを分類すると、

    • 両電源オペアンプ
    • 単電源オペアンプ
    • レール ツー レール(Rail to Rail)オペアンプ

の3つになります。

 

1つずつ解説していきます。

 

両電源オペアンプ

両電源オペアンプは、オペアンプの中で最も一般的なオペアンプです。

電源はプラスとマイナスの両電源を使用します。

例えば、

プラス電源+V=+15V、マイナス電源-V=-15V

です。

両電源オペアンプ

 

単純に電圧を増幅するなら、この両電源オペアンプを使用すれば大丈夫です。

 

実際にアナログ・デバイセズ社の両電源オペアンプAD711でシミュレーションします。

両電源オペアンプのシミュレーション

回路図「IN」の電圧波形:V(in)の信号(青線)【振幅±1V】
回路図「OUT」の電圧波形:V(out)の信号(赤線)【振幅±10V】

 

両電源オペアンプを反転増幅回路で使用しており、増幅率は10倍です。

増幅率:R2/R1 = 100kΩ/10kΩ = 10倍

よって、±1Vを入力すると±10Vに増幅できていることが分かります。

補足

「反転増幅回路」や「増幅率」が分からない場合は、下記の記事を参考にしてください。

参考記事:オペアンプ反転増幅回路で増幅率を計算【適切な抵抗値の求め方】

 

このように、電圧を増幅するなら両電源オペアンプを使用します。

 

しかし、この両電源オペアンプには弱点があります。

それは、増幅率を15倍にすれば分かります。

そのため、抵抗R2を150kΩに変更します。

増幅率:R2/R1 = 150kΩ/10kΩ = 15倍

増幅率15倍の両電源オペアンプのシミュレーション

 

これでシミュレーションします。

増幅率15倍の両電源オペアンプのシミュレーション結果

回路図「IN」の電圧波形:V(in)の信号(青線)【振幅±1V】
回路図「OUT」の電圧波形:V(out)の信号(赤線)【振幅±14V】

 

入力電圧±1V × 増幅率15倍 = ±15V

になるはずですが、シミュレーション結果をみると「±14V」になっています。

ちょっと分かりにくいかもしれませんが、V(out)の波形(赤線)が±15Vに届いていません。

 

電源±15V(+V=+15V、-V=-15V)なので、±15Vまで出力できると思うかもしれませんが、±14Vまでしか出力できないのです。

つまり、両電源オペアンプは電源に近い電圧を出力できません。

この理由を下記で解説してますので、ぜひご覧ください。

» 両電源オペアンプが電源電圧を出力できない理由

 

 

なお、この弱点に対応したのが「単電源オペアンプ」と「レール ツー レール(Rail to Rail)オペアンプ」です。

次は、単電源オペアンプを解説していきます。

 

 

単電源オペアンプ

単電源オペアンプは、単電源で動作するオペアンプです。

電源はプラス電源だけで良いです。

例えば、

プラス電源+V=+15V

であり、マイナス電源の端子はGND(0V)に接続します。

単電源オペアンプ

 

このオペアンプは実際の回路設計でも、よく使用します。

なぜかというと、

センサ → オペアンプ → CPU

という順序で電気信号を伝えるとき、CPUはプラス電源で動作するので、マイナス電源はないからです。

そのため、プラス電源だけで動作する単電源オペアンプが、実際の回路設計で使用されます。

マイナス電源を用意する手間とコストを省けるメリットがあります。

 

その単電源オペアンプの動作を、アナログ・デバイセズ社の単電源オペアンプAD820でシミュレーションします。

単電源オペアンプのシミュレーション

回路図「IN」の電圧波形:V(in)の信号(青線)【振幅+1V】
回路図「OUT」の電圧波形:V(out)の信号(赤線)【振幅+10V】

 

単電源オペアンプを非反転増幅回路で使用しており、増幅率は10倍です。

増幅率:1 + R2/R1 = 1 + 90kΩ/10kΩ = 1 + 9 = 10倍

よって、+1Vを入力すると+10Vに増幅できていることが分かります。

 

これを先程の両電源オペアンプだったらどうなるでしょうか?

オペアンプを単電源オペアンプAD820から両電源オペアンプAD711に変更してシミュレーションします。

単電源オペアンプを両電源に変更したシミュレーション

回路図「IN」の電圧波形:V(in)の信号(青線)
回路図「OUT」の電圧波形:V(out)の信号(赤線)

 

シミュレーション結果を見ると、0~2Vは出力できないことが分かりますね。

マイナス電源の端子をGND(0V)に接続しており、両電源オペアンプだと電源に近い電圧は出力できません。

 

よって、GND(0V)に近い電圧を出力したい場合は、単電源オペアンプを使用します。

 

しかし、オペアンプを両電源で使用するとき、電源に近い電圧を出力するにはどうすれば良いでしょうか?

それが次に解説する「レール ツー レール(Rail to Rail)オペアンプ」です。

 

 

レール ツー レール(Rail to Rail)オペアンプ

レール ツー レール(Rail to Rail)オペアンプは、

電源いっぱいまで電圧を出力する

ことができます。

例えば、

プラス電源+V=+15V、マイナス電源-V=-15V

とすると出力電圧OUTは、ほぼ-15V~+15Vを出力できます。

レール ツー レール オペアンプ

 

実際にアナログ・デバイセズ社のレール ツー レール オペアンプAD822でシミュレーションします。

レール ツー レール オペアンプのシミュレーション

回路図「IN」の電圧波形:V(in)の信号(青線)【振幅±1V】
回路図「OUT」の電圧波形:V(out)の信号(赤線)【振幅±15V】

 

シミュレーション結果をみると、

両電源オペアンプの出力電圧OUTは±14Vでしたが、

レール ツー レール オペアンプは±15Vまで出力できているのが分かります。

 

なぜ、レール ツー レール だと電源いっぱいまで出力できるのでしょうか?

それはオペアンプ出力内部のトランジスタに理由があります。

 

オペアンプの出力部

赤枠で囲ったオペアンプ出力の内部には、2つのトランジスタがあります。

 

オペアンプ出力の内部のトランジスタ

左図は両電源オペアンプで、右図はレール ツー レール オペアンプです。

 

何が違うかというと、

両電源オペアンプは、

上側のトランジスタ:NPNトランジスタ
下側のトランジスタ:PNPトランジスタ

となっているのに対して、

レール ツー レール オペアンプは、

上側のトランジスタ:PNPトランジスタ
下側のトランジスタ:NPNトランジスタ

となっています。

つまり、NPNとPNPのトランジスタが逆になっているんですね。

 

このようにして、プラス電源+V=+15Vを出力すると、

オペアンプのプラス電源出力の動作

両電源:
出力電圧Vout = +V - VBE = +15V - 1V = 14V

レール ツー レール:
出力電圧Vout = +V - VCE = +15V - 0.1V = 14.9V

となり、レール ツー レール は、ほぼ+15V(≒14.9V)を出力できます。

なお、ベース-エミッタ間電圧VBEは1V程度で、コレクタ-エミッタ間電圧VCEは0.1V程度です。

 

同様に、マイナス電源-V=-15Vを出力すると、

オペアンプのマイナス電源出力の動作

両電源:
出力電圧Vout = -V + VBE = -15V + 1V = -14V

レール ツー レール:
出力電圧Vout = -V + VCE = -15V + 0.1V = -14.9V

となり、レール ツー レール は、ほぼ-15V(≒-14.9V)を出力できます。

 

このような理由で レール ツー レール オペアンプは、電源いっぱいまで出力できるのです。

 

 

さて、ここまで3つのオペアンプの種類を解説してきました。

それぞれの種類を理解できても、実際のオペアンプは数多くあります。

いったいどれを使えば良いのやら・・・という方のために、

私の経験に基づいて、おすすめのオペアンプICについて解説していきます。

 

 

おすすめのオペアンプIC

私がおすすめするオペアンプICは、

レール ツー レール オペアンプ  LMC6482

です。

 

理由は『万能』だからです。

 

レール ツー レール オペアンプ として電源いっぱいまで出力できるだけでなく、単電源としても使用できます。

 

実際にLMC6482でシミュレーションして、確かめてみます。

 

 

おすすめICのレール ツー レール 動作

レール ツー レール オペアンプLMC6482のシミュレーション

回路図「IN」の電圧波形:V(in)の信号(青線)【振幅±1V】
回路図「OUT」の電圧波形:V(out)の信号(赤線)【振幅±15V】

LMC6482を反転増幅回路で使用しており、増幅率は15倍です。

増幅率:R2/R1 = 150kΩ/10kΩ = 15倍

よって、±1Vを入力すると±15Vに増幅されています。

つまり、電源±15Vに対して、±15Vまで出力できているということです。

 

では、次はLMC6482の単電源の動作です。

 

 

おすすめICの単電源動作

オペアンプLMC6482の単電源動作のシミュレーション

回路図「IN」の電圧波形:V(in)の信号(青線)【振幅+1V】
回路図「OUT」の電圧波形:V(out)の信号(赤線)【振幅+15V】

 

LMC6482を非反転増幅回路で使用しており、増幅率は15倍です。

増幅率:1 + R2/R1 = 1 + 140kΩ/10kΩ = 1 + 14 = 15倍

よって、+1Vを入力すると+15Vに増幅されています。

つまり、電源+15Vに対して、+15Vまで出力できているということです。

また、マイナス電源の端子をGND(0V)に接続しており、0Vも出力できていることが分かります。

 

単電源動作でも、電源いっぱいまで出力できていますね。

 

よって、 LMC6482 は『万能』なので、おすすめのオペアンプICです。

 

 

オペアンプの種類のまとめ

オペアンプの種類やおすすめICについて解説しました。

両電源、単電源、レール ツー レール(Rail to Rail)など、オペアンプとしてよく使われているものを理解できたでしょうか?

本記事が少しでもお役に立てば幸いです。

 

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