- オペアンプ回路で負帰還が必要な理由は何ですか?
- オペアンプ回路は負帰還によって、どのように周波数特性や帯域幅が変化しますか?
- 負帰還回路にコンデンサを使用するのはなぜですか?
こんな疑問にお答えします。
本記事を書いている私は、電子回路歴10年ほどです。
オペアンプの回路は負帰還を使用することが多いです。
その理由を知っていますか?
本記事を読めば、オペアンプの負帰還について理解できます。
5分で読めますので、ぜひ最後までご覧ください。
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オペアンプの負帰還回路
オペアンプ回路に負帰還が必要な理由は、出力電圧を安定させるためです。
「負帰還なし」と「負帰還あり」で比較してみます。
【負帰還なし】
回路図「IN」の電圧波形:
V(in)の信号(赤線)
回路図「OUT」の電圧波形:
V(out)の信号(青線)
負帰還がないと、オペアンプ自体の増幅度によって大きく増幅してしまい、
電源電圧(±15V)に到達してしまいます。
オペアンプ自体の増幅度は、だいたい10^5倍(=10万倍)ぐらいです。
オペアンプ回路の電源電圧は3.3V、5Vの場合が多く、大きくみても15Vや24Vです。
10mVの小さな入力信号でも簡単に電源電圧に到達してしまいます。
しかし負帰還があると、増幅度はオペアンプ自体の増幅度ではなく、抵抗R1とR2で決まります。
【負帰還あり】
回路図「IN」の電圧波形:
V(in)の信号(赤線)
回路図「OUT」の電圧波形:
V(out)の信号(青線)
抵抗R2で出力電圧をオペアンプの-端子(マイナス端子)に戻しています。
この場合
出力電圧 =( R2 / R1 )× 入力電圧 = ( 100k / 10k )× 10mV = 10 × 10mV = 100mV
となり、抵抗R1とR2で出力電圧が決まります。
このように負帰還で出力電圧を安定させることができます。
よくある質問:周波数特性はどうなりますか?帯域幅はどのように変化しますか?
周波数特性はどうなりますか?
帯域幅はどのように変化しますか?
周波数特性の増幅度は小さくなり、帯域幅は大きくなります。
具体的に「負帰還なし」と「負帰還あり」を比較して解説します。
【負帰還なし】
回路図「OUT」の増幅度(電圧利得)波形:
V(out)の信号(青線)
【負帰還あり】
回路図「OUT」の増幅度(電圧利得)波形:
V(out)の信号(赤線)
この波形を合わせてみると、以下のようになります。
負帰還なし:青線
負帰還あり:赤線
「負帰還あり」になると、
縦軸の増幅度(電圧利得)が下がり、横軸の帯域幅(周波数)が大きくなっています。
もともとオペアンプの増幅度は120dBありましたが、「負帰還あり」になると40dBまで下がっています。
40dBの理由は、
R2 / R1 = 1M / 10k = 100倍(=40dB)
ということです。
「負帰還あり」だと、抵抗R1とR2によって増幅度が決まるので、40dBになっています。
また、帯域幅はグラフが下がり始めるところまでの幅なので、
120dBから40dBになることで、帯域幅は10Hzから100kHzまで大きくなります。
よくある質問:オペアンプの帰還量を増やすということは、増幅度を小さくするという意味でしょうか?
増幅度を小さくするという意味でしょうか?
同じ意味だと思います。
オペアンプの負帰還は、
出力電圧の一部をオペアンプの-端子に戻し、入力電圧と逆位相で足し算することで、出力電圧の大きさを抑えています。
なので、帰還量を増やせば、出力電圧の大きさはより抑えられ、増幅度は小さくなります。
逆にいうと、増幅度を小さくすれば、帰還量を増やせます。
先程のオペアンプ回路の増幅度(R2 /R1)でいえば、R2を小さくして帰還量を増やすことができます。
よくある質問:医療用機器は負帰還回路がよいと聞いたことがありますが本当ですか?
医療用機器に限らず、オペアンプは負帰還で使用することが多いです。
これまで解説してきましたが、オペアンプ単体だと増幅度が大きいので、
簡単に電源電圧に到達してしまいます。
負帰還を利用して自分が実現したい増幅度に設定して使用するものです。
オペアンプの負帰還でコンデンサを使用するとローパスフィルタ
オペアンプの負帰還回路で、コンデンサを使用している回路を見たことあるでしょうか?
このコンデンサは何のためにあるの?と思ったかもしれませんが、
これはローパスフィルタの役割をしています。
ローパスフィルタの役割は、
- 低い周波数の電圧は通過する
- 高い周波数の電圧は遮断する
なので、低い周波数の電圧だけ増幅させたいときに、コンデンサを追加します。
私の経験では、直流電圧だけを増幅したいときに、よくコンデンサを入れてます。
ノイズなどの不要な高周波の電圧は増幅させたくないので、コンデンサで遮断していました。
それでは、具体的な動作を解説します。
コンデンサは、
- 低い周波数のとき、コンデンサなし
- 高い周波数のとき、ショート(短絡)
と考えることができます。
よって、低い周波数のとき、
R2 / R1 = 1M / 10k = 100倍(=40dB)
であり、100倍に増幅することができます。
しかし、高い周波数のとき、抵抗R2の両端はショートしているので0Ωです。
なので、
R2 / R1 = 0 / 10k = 0倍
となり、増幅することはできません。
つまり、低い周波数は増幅できて、高い周波数は増幅できないので、ローパスフィルタとして動作します。
オペアンプ負帰還回路のシミュレーション
実際にシミュレーションして確かめてみます。
【低い周波数】
回路図「IN」の電圧波形:
V(in)の信号(赤線)
回路図「OUT」の電圧波形:
V(out)の信号(青線)
100Hzの低い周波数で、10mVの電圧を入力すると、100倍の1Vに増幅できていることが分かります。
【高い周波数】
回路図「IN」の電圧波形:
V(in)の信号(赤線)
回路図「OUT」の電圧波形:
V(out)の信号(青線)
100kHzの高い周波数で、10mVの電圧を入力しても、増幅できません。
よって、コンデンサを追加すると、ローパスフィルタとして動作していることを確認できました。
よくある質問:オペアンプの負帰還回路で、抵抗とコンデンサが直列のときの動作を教えてください
抵抗とコンデンサが直列のときの動作を教えてください。
考え方は同じですね。
低い周波数と高い周波数で考えてみましょう。
低い周波数のとき、コンデンサなしの状態なので、負帰還はかからなくなります。
そうなると、最初の方で解説したように、オペアンプ自体で増幅するので電源電圧に到達してしまいます。
回路図「IN」の電圧波形:
V(in)の信号(赤線)
回路図「OUT」の電圧波形:
V(out)の信号(青線)
高い周波数のとき、コンデンサはショートなので、負帰還はかかります。
そうなると、増幅度は抵抗R1とR2で決まり、100倍になります。
回路図「IN」の電圧波形:
V(in)の信号(赤線)
回路図「OUT」の電圧波形:
V(out)の信号(青線)
これが、オペアンプの負帰還で抵抗とコンデンサを直列にしたときの動作です。
オペアンプの負帰還回路のまとめ
オペアンプの負帰還回路について解説しました。
オペアンプの回路では、ほとんど負帰還を使用しますので、しっかりと理解しておきましょう。
本記事が少しでもお役に立てば幸いです。
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・第2章
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・第3章
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