- オペアンプの周波数特性でなぜグラフが下がるのか、原因と理由が知りたい。
- オペアンプ周波数特性の計算方法を教えてください。
こんな質問にお答えします。
本記事を書いている私は、電子回路を約10年、仕事を通じて勉強しています。
オペアンプは周波数が高くなると電圧利得[dB]が下がっていきます。
その理由は何故だか知っていますか?
本記事を読めば、オペアンプの周波数特性が下がる原因を理解できます。
3分で読めますので、ぜひ最後までご覧ください。
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オペアンプの周波数特性でグラフが下がる原因
結論からいいますと、オペアンプ内部にコンデンサがあるからです。
新日本無線製オペアンプ NJM4558 のデータシートより抜粋
本当にコンデンサがあるという理由で、電圧利得[dB]のグラフは下がるでしょうか?
シンプルに抵抗とコンデンサだけで確かめてみます。
まずは抵抗しかない回路の周波数特性をシミュレーションします。
回路図「OUT」の電圧利得波形:
V(out)の信号(青線)
グラフは一定ですね。全く下がっていません。
では、コンデンサがあるとどのようになるでしょうか?
回路図「OUT」の電圧利得波形:
V(out)の信号(青線)
オペアンプの周波数特性で、周波数が高くなるほどグラフが下がっています。
よって、オペアンプ内部には抵抗成分だけでなく、コンデンサもあるので、グラフは下がっていきます。
それでは、
なぜコンデンサがあると、周波数が高くになるにつれてグラフは下がるのか?
を解説していきます。
コンデンサでオペアンプの周波数特性グラフが下がる理由
周波数が高くなるにつれてグラフが下がる理由は、コンデンサに電荷をチャージする時間が短くなるからです。
具体的に解説します。
「電圧の大きさ:±1V、周波数:1Hz」の信号を入力したとき、
V(in)の電圧(回路図のIN)が、0V→1Vに立ち上がると、
V(out)の電圧(回路図のOUT)も、0V→1Vまで上昇しています。
このときの時間は、250msです。
つまり、コンデンサに電荷がチャージするまで、250msの時間がかかりました。
回路図「IN」の電圧波形:
V(in)の信号(青線)
回路図「OUT」の電圧波形:
V(out)の信号(赤線)
次に「電圧の大きさ:±1V、周波数:100Hz」の信号を入力したとき、
V(in)の信号(回路図のIN)が、0V→1Vに立ち上がると、
V(out)の信号(回路図のOUT)は、0V→100mVまでしか上昇していません。
このときの時間は、2.5msです。
つまり、コンデンサに電荷をチャージする時間は、2.5msしかありませんでした。
回路図「IN」の電圧波形:
V(in)の信号(青線)
回路図「OUT」の電圧波形:
V(out)の信号(赤線)
このことから言えることは、
周波数が高くなると、コンデンサに電荷をチャージする時間が短くなるということです。
要するに、
コンデンサに電荷をチャージする時間が短い
→ コンデンサにチャージする電荷量が少ない
→ 電圧の上昇は小さい
ということです。
周波数特性の縦軸は、電圧利得(V(out)/V(in)の倍率)です。
なので、V(out)の電圧が小さくなれば、電圧利得も小さくなります。
よって、周波数が高くなると電圧利得が小さくなり、周波数特性のグラフは下がっていきます。
よくある質問:増幅度が変わるとオペアンプの遮断周波数や帯域幅が変化するのはなぜですか?
まずは、実際にオペアンプの非反転増幅回路で確認してみます。
【増幅度:3.2倍(= 1 + (22k/10k))】
回路図「OUT」の電圧利得波形:
V(out)の信号(青線)
【増幅度:101倍(= 1 + (1M/10k))】
回路図「OUT」の電圧利得波形:
V(out)の信号(青線)
確かに、増幅度が変わると遮断周波数や帯域幅は変化していますね。
増幅度が大きくなる → 遮断周波数や帯域幅が小さくなる
という関係です。
この理由は、オペアンプの電圧波形の立ち上がり速度に限界があるからです。
具体的に解説します。
増幅度が大きくなることは、オペアンプの電圧波形の立ち上がり速度が速くなることです。
下図に回路図「OUT」の電圧波形を示します。
立ち上がり速度 = 電圧の大きさ / 立ち上がり時間 です。
立ち上がり時間は、増幅度が大きい場合と小さい場合で同じです。
電圧の大きさは、増幅度が大きいほど、大きくなります。
よって、立ち上がり速度は、増幅度が大きい方が速くなるのです。
オペアンプには、この立ち上がり速度に限界があり、増幅度の大きい方が先に限界に到達します。
つまり、周波数を少しずつ高くしていくと、増幅度の大きい方が先に限界に到達し、
増幅度の小さい方は後から限界に到達します。
これにより、オペアンプの周波数特性では、
増幅度が大きい → 遮断周波数や帯域幅が小さい(先に限界に到達する)
増幅度が小さい → 遮断周波数や帯域幅が大きい(後から限界に到達する)
ということになります。
では、次にオペアンプの周波数特性を計算していきます。
オペアンプの周波数特性を計算する方法
オペアンプの周波数特性は以下の式で計算することができます。
電圧利得[dB] = 20log10{V(out)/V(in)}
この式を倍率で表現するなら、
電圧利得[dB] = 20log10{V(out)/V(in)}
⇒ ( 電圧利得[dB] / 20 ) = log10{V(out)/V(in)}
⇒ 10^( 電圧利得[dB] / 20 ) = V(out)/V(in)
⇒ V(out)/V(in) = 10^( 電圧利得[dB] / 20 )
と表すことができます。
実際にオペアンプの非反転増幅回路で計算してみましょう。
回路図「OUT」の電圧利得波形:
V(out)の信号(青線)
周波数:100kHzのとき、電圧利得は10[dB]なので、
V(out)/V(in)
= 10^( 電圧利得[dB] / 20 )
= 10^( 10 / 20 )
= 10^( 1 / 2 )
= 3.16倍
V(in)を10mVとすると、31.6mVとなります。シミュレーションで確認します。
回路図「IN」の電圧波形:
V(in)の信号(青線)
回路図「OUT」の電圧波形:
V(out)の信号(赤線)
V(out)の電圧が32mVぐらいで、ほぼ計算値と一致しています。
周波数:3MHzのとき、電圧利得は7[dB]なので、
V(out)/V(in)
= 10^( 電圧利得[dB] / 20 )
= 10^( 7 / 20 )
= 10^( 0.35 )
= 2.24倍
V(in)を10mVとすると、22..4mVとなります。
回路図「IN」の電圧波形:
V(in)の信号(青線)
回路図「OUT」の電圧波形:
V(out)の信号(赤線)
V(out)の電圧が22mVぐらいで、ほぼ計算値と一致しています。
周波数:100MHzのとき、電圧利得は-20[dB]なので、
V(out)/V(in)
= 10^( -20 / 20 )
= 10^( -1 )
= 0.1倍
V(in)を10mVとすると、1mVとなります。
回路図「IN」の電圧波形:
V(in)の信号(青線)
回路図「OUT」の電圧波形:
V(out)の信号(赤線)
V(out)の電圧が1mVぐらいで、ほぼ計算値と一致しています。
周波数:1GHzのとき、電圧利得は-40[dB]なので、
V(out)/V(in)
= 10^( -40 / 20 )
= 10^( -2 )
= 0.01倍
V(in)を10mVとすると、0.1mVとなります。
回路図「IN」の電圧波形:
V(in)の信号(青線)
回路図「OUT」の電圧波形:
V(out)の信号(赤線)
V(out)の電圧が0.1mVぐらいで、ほぼ計算値と一致しています。
このようにオペアンプの周波数特性を計算することができます。
補足:オペアンプの周波数特性で、グラフが下がる傾きについて
オペアンプの周波数特性で、グラフが下がるときの傾きは、以下のとおりです。
電圧利得[dB]が-20dB下がると、周波数は10倍になります。
0dB → -20dB のとき、10MHz → 100MHz
-20dB → -40dB のとき、100MHz → 1000MHz(1GHz)
-20dBは、先程の計算で0.1倍でした。
つまり、電圧利得が0.1倍になると周波数は10倍になるということです。
知識として知っておきましょう。
オペアンプ周波数特性のまとめ
オペアンプの周波数特性について解説しました。
周波数が高くなるにつれて電圧利得が下がっていく原因を知らないと、
「電圧を増幅しているのに電圧が小さくなるのはなぜ?」となってしまいます。
そうならないためにも、オペアンプの周波数特性について理解しておきましょう。
本記事が少しでもお役に立てば幸いです。
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