LTspiceに部品モデルを追加する方法

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部品モデル追加のイメージ図
  • LTspiceで「あらかじめ用意された部品モデルのリスト」に使いたい部品モデルがない。
  • 自分で入手した部品モデルを「LTspiceに追加する方法」を知りたい。

このように、電子回路シミュレータLTspiceで部品モデルを用意するときに、困ったことはありませんか?

LTspiceに「部品モデルを追加する方法」を知りたい方向けに、部品モデルの追加方法を解説します。

目次

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LTspiceに部品モデルを追加する方法は4通りある

LTspiceは、Spiceをベースとした「電子回路シミュレータ」です。

回路規模に制限がなく、完全無償で利用できます。

LTspiceで「あらかじめ用意された部品モデル(spiceモデル)のリスト」に、使いたい部品モデルがない場合、

自分で部品モデルを入手し、LTspiceに追加する必要があります。

LTspiceに「部品モデルを追加する方法」は大きく分けて4通りあります。

1.あらかじめ用意されている部品モデルのリストに追加する方法

メリット

「あらかじめ用意されている部品モデル」と同じように、

「部品モデルを選択する画面のリスト」に追加されるため、

その中から選択することができるようになります。

デメリット

LTspiceを再インストールする時に「オーバライト(上書き)」を選択すると、

個別に追加した部品モデルは削除されてしまいます。

ただし「アップデート」を選択すれば、削除されることなく追加したモデルも残ります。

2.デフォルトで入っている部品モデルと同じフォルダに部品モデルを入れる方法

メリット

追加方法がシンプルでわかりやすい。

フォルダのアドレス C:\Program Files\LTC\LTspiceXVII\lib\sub

デメリット

回路図上に

.lib 部品モデル名.lib

というコマンドを入力する必要があります。

3.任意のフォルダを作成し、部品モデルを入れ、回路図上で、そのフォルダの位置(パス)を指定する

メリット

「あらかじめ用意されている部品モデル」と「追加した部品モデル」を、

フォルダを作成することで区別できます。

ただし、任意のフォルダは「C:\Program Files\LTC\LTspiceXVII\lib\sub」内に作成します。

デメリット

回路図上に

.lib パス\部品モデル名.lib

というコマンドを入力する必要があります。パスが長いと入力に手間がかかります。

4.回路図上に部品モデル情報を記載する方法

メリット

回路図上に「部品モデルの情報」を記載するため、

回路図データだけ移行すれば、他のPCでもそのままシミュレーションできます。

デメリット

回路図上に文字(部品モデル情報)が多く記載されるため、回路図の見栄えがわるくなります。

結局、部品モデルの追加方法はどれが一番良いか?

この4通りの部品モデル追加方法の中で「どの方法が一番良いか」は一概には言えません。

個人の好みによりますので、自分にあった方法を選んでください。

参考までに、

私は「任意のフォルダを作成する方法」と「回路図上に部品モデルを記載する方法」を使い分けしています。

任意のフォルダを作成する方法

多くの電子回路をシミュレーションする場合、多くの部品モデルが必要になります。

そのため、新たに入手した部品モデルをフォルダ分けして管理しています。

おすすめは、半導体メーカごとにフォルダを作成し、部品モデルを分けることです。

例えば、

アナログデバイセスであれば「AnalogDevices」
ROHMであれば「Rohm」
新日本無線であれば「NJR」

というフォルダを作成し、それぞれに各社の部品モデルを入れています。

回路図上に部品モデルを記載する方法

ちょっと電子回路の動作をシミュレーションで確認したいというときは、

「回路図上に部品モデルの情報を記載する方法」で確認しています。

回路図上に直接、部品モデルを記載しているため、部品モデルを読み込むという作業が必要なく、

個人的には一番楽にシミュレーションできる方法だと思います。

ちなみに、メリットでも説明しましたが、

この方法は回路図上に部品モデルの情報を記載するため、

回路図データだけ移行すれば、他のPCでもそのままシミュレーションできます。

他の方法は「回路図データ」と「部品モデルのファイル」が分かれているため、

PCを移行した際に、回路図データだけ移行してシミュレーションを実行しても、

「部品モデルがありません」というエラーが発生します。

つまり他の方法は回路図データだけでなく、部品モデルのファイルも移行する必要があるので、

それを手間と感じる方には「回路図上に部品モデルを記載する方法」は、おすすめの追加方法です。

LTspiceの部品モデルを入手する方法

ところで、部品モデルはどこから入手するでしょうか?

ここでは、2通りの方法を紹介します。

半導体メーカのウェブサイトから入手する

アナログデバイセズ、ローム、新日本無線といった半導体メーカのウェブサイトに

部品モデル(spiceモデル)があるので、ダウンロードして入手することができます。

例えば、Googleで「アナログデバイセズ spice」「ローム spice」と検索すれば、

部品モデルをダウンロードできるウェブサイトが表示されます。

電子回路の参考書に付属しているCD-ROMから入手する

例えば、東芝製の有名なトランジスタ「2SC1815」の部品モデルは、

「LTspiceにあらかじめ用意されている部品モデルのリスト」にはありませんが、

「電子回路シミュレータLTspice入門編」という本に付属しているCD-ROMの

「toragi.libファイル」に、2SC1815の部品モデルが記載されています。

他にも、

「電子回路シミュレータLTspice実践入門」や「定番回路シミュレータLTspice 部品モデル作成術」

という参考書に付属しているCD-ROMに、様々な部品モデルのファイルがありますので、

興味のある方は入手してみてください。

MOSFETの部品モデルをLTspiceに追加する方法

部品モデルには「デバイスモデル(.model)」と「サブサーキットモデル(.subckt)」があり、

デバイスモデルは「パラメータモデル」、サブサーキットモデルは「等価回路モデル」とも言います。

この2つのモデルの違いについては

」の第4章と第5章で解説されてますので、

興味のある方は参照してください。

ここでは「部品モデルの追加」という観点で、どのような違いがあるかを解説します。

デバイスモデル(.model)の追加方法

NチャネルMOSFETの部品追加方法

「回路図上に部品モデルを記載する方法」で東芝製のNチャネルMOSFET「2SK2232」を追加し、

ID-VDS特性のシミュレーションを実行した例です。

縦軸がドレイン電流ID[A]、
横軸がソースドレイン間電圧VDS[V]になります。

シミュレーション結果のグラフが6本ありますが、

これはゲートソース間電圧VGS[V]の電圧を、

2.5[V]から5.0[V]まで、0.5[V]ステップでスイープしているためです。

青線:VGS=2.5[V]
赤線:VGS=3.0[V]
エメラルドグリーン線:VGS=3.5[V]
ピンク線:VGS=4.0[V]
灰色線:VGS=4.5[V]
緑線:VGS=5.0[V]

部品モデルの追加手順は以下の通りです。

1. メニューバーのEdit → Component から「nmos」を選択し、回路図のM1に配置する。

2. メニューバーのEdit → Spice Directive を選択し、以下のspiceモデルを入力する。
(上図のEdit Text on the Schematic)

.model 2SK2232 VDMOS(Rg=3 Rd=10m Rs=0 Rb=0 Vto=1.6 Kp=10 Cgdmax=.2n Cgdmin=.2n Cgs=1n Cjo=.3n Is=0.01m Ron=36m Qg=38n lambda=0.005)

3. M1のNMOS
(回路図のNMOS、あるいは、2SK2232と記載されている箇所)の上で右クリックを押し、
「NMOS」を「2SK2232」に変更する。
(上図のEnter new Value for M2)

このように「部品モデルの名前」と「回路図上の部品の名前」を一致させれば、

シミュレーションできることが分かります。

他の方法で「部品モデルの追加方法」を知りたい方は、

先程紹介した「」という本の第10章に

追加方法の解説がありますので、参照してください。

サブサーキットモデル(.subckt)の追加方法

サブサーキットモデルも「部品モデルの名前」と「回路図上の部品の名前」を一致させれば、

シミュレーションすることができます。

ただし、部品モデル追加の作業が少し増えます。

実際に、サブサーキットモデルであるROHM製PチャネルMOSFET「RZF020P01」

の部品(シンボル)を追加してみてみましょう。

PチャネルMOSFETの部品追加方法

これも「回路図上に部品モデルを記載する方法」で、

サブサーキットモデルであるROHM製PチャネルMOSFET「RZF020P01」を追加し、

ID-VDS特性のシミュレーションを実行した例です。

縦軸がドレイン電流ID[A]、
横軸がソースドレイン間電圧VDS[V]になります。

シミュレーション結果のグラフが5本あり、これはゲートソース間電圧VGS[V]の電圧を

-2.4[V]から-1.2[V]まで、0.3[V]ステップでスイープしています。

ピンク線:VGS= -1.2[V]
エメラルドグリーン線:VGS=-1.5[V]
赤線:VGS=-1.8[V]
青線:VGS=-2.1[V]
緑線:VGS=-2.4[V]

部品モデルの追加手順は以下の通りです

1. メニューバーのEdit → Component から「pmos」を選択し、回路図のM1に配置する。

2. ROHM社のウェブサイトにアクセスして、
「デザインモデル」の『RZF020P01 SPICE Model』をダウンロードした後、
メニューバーのEdit → Component から「Spice Directive」を選択し、
ダウンロードしたspiceモデルの情報を全て入力する。
(上図のEdit Text on the Schematic)

>> ROHM社のウェブサイトはこちら(RZF020P01)

3. M1のPMOS
(回路図のPMOS、あるいは、RZF020P01と記載されている箇所)の上で右クリックを押し、
「PMOS」を「RZF020P01」に変更する。
(上図のEnter new Value for M2)

ここまでは「デバイスモデル」と同じ手順になります。

次は「サブサーキットモデル」にだけ必要な手順です。

サブサーキットモデルの部品追加方法

4. 回路図上のPチャネルMOSFETの上で「Ctrl+右クリック」を押し、
Prefixの項目を「MP」から「X」に変更する。

サブサーキットモデルの部品追加方法の注意点

5. 回路図上のPチャネルMOSFETの上で「Ctrl+右クリック」を押し、
Component Arribute Editorの上側にある「Open Symbol」を左クリックする。

6. pmos.asyにPチャネルMOSFETの部品(シンボル)が表示され、
青枠で示された端子が3つあるので、各端子を右クリックし、
Pin/Port Propertiesの「Label」と「Netlist Order」を確認する。

上図では、上側の端子を右クリックしたときのPin/Port Propertiesを表示しており、

Label:D Netlist Order:1

であることが確認できる。

同様に残りの2端子を右クリックして確認すると、

Label:G Netlist Order:2
Label:S Netlist Order:3

であることが確認できる。

7. ROHM社のウェブサイトからダウンロードした部品モデル(spiceモデル)
「 rzf020p01.lib」のピン配置を確認する。

上図では「D、G、S」の順に「1、2、3」となっていることが確認できる。

「MOSFETの部品(シンボル)」と

「ROHM社からダウンロードした部品モデル(spiceモデル)」のピン配置が一致している

ことが確認できたので、サブサーキットモデルの場合もシミュレーションできるようになりました。

なお、このピン配置は、実部品のピン配置ではありませんので、ご注意ください。

もし、ピン配置が一致しなかった場合は、部品モデル(spiceモデル)の番号を修正し、

部品(シンボル)の「Netlist Order」に合わせるようにしてください。

自在に部品モデルを追加できると、LTspiceシミュレーションの幅が広がる。

部品モデルを追加できるようになると、実際の回路動作に近いシミュレーションができるようになります。

デフォルトのトランジスタの高速信号シミュレーション

例えば、上図は「LTspiceのデフォルトのトランジスタ」に、

1GHzの矩形波を入力したシミュレーション結果です。

V(in)の信号(青線)は回路図上「IN」の波形で、

V(out)の信号(赤線)は回路図上「OUT」の波形です。

入力信号V(in)の矩形波に対して、出力信号V(out)矩形波が出力されていることが分かります。

次に、部品モデルを追加した場合を考えてみます。

2SC1815のトランジスタの高速信号シミュレーション

同じ回路で「LTspiceのデフォルトのトランジスタ」から、

「東芝製のトランジスタ2SC1815の部品モデル」に変更したときのシミュレーション結果です。

入力信号V(in)の矩形波に対して、

出力信号V(out)は、4.999[V]~5.014[V]の間の15[mV]程度しか変動してないことが分かります。

デフォルトのトランジスタは「理想的なモデル」として設定されているので、

1GHzの高速信号が入力されても正常に矩形波を出力できましたが、

「2SC1815」のような実際のトランジスタは、動作速度に上限があるため、

高速信号を入力すると正常に矩形波を出力できません。

つまり、実際に使う部品モデルでシミュレーションする方が、

実際の回路に近い動作をシミュレーションすることが可能であり、

電子回路が正常に動作しているかどうかを正しく判断することができます。

部品モデルが入手できない場合の対処方法

半導体メーカのウェブサイトなどに「使いたい部品モデル」がない場合、

あるいは、入手した部品モデルが暗号化されており、LTspiceで実行できない場合、

どうすれば良いでしょうか?

いくつか方法を紹介します。

半導体メーカに問い合わせる

半導体メーカのウェブサイトになくても、

問い合わせページから「使いたい部品モデルの情報」を連絡すれば、入手できる場合があります。

部品モデルを自分で作成する

部品モデルを自分で作成する場合は、

」という本に作成方法が記載されていますので、

参考にしてみてください。

類似の部品モデルのパラメータを変更する

例えば、ツェナーダイオード「LM385」の部品モデルですが、

「LM385-1.2」の部品モデルはインターネット上にありますが、「LM385-2.5」はありません。

ツェナーダイオードLM385の部品モデル

そこで、「LM385-1.2」の部品モデルから「LM385-2.5」を作成してみましょう。

まずは「LM385-1.2」のシミュレーション結果です。

ツェナーダイオードLM385-1.2のシミュレーション

V(in)の信号(青線)は回路図上「IN」の波形で、

V(out)の信号(赤線)は回路図上「OUT」の波形です。

入力信号V(in)振幅9Vの矩形波に対して、

出力信号V(out)振幅が1.2Vに制限されていることが分かります。

LM385-2.5を作成するため、LM385-1.2の部品モデルを2箇所だけ以下のように変更します。

変更前).SUBCKT LM385-1.2 A K
変更後).SUBCKT LM385-2.5 A K

変更前)RBV 3 0 1.237E3 TC=1.139E-6 -346.8E-9
変更後)RBV 3 0 2.5E3 TC=1.139E-6 -346.8E-9

変更後のシミュレーション結果は以下になります。

ツェナーダイオードLM385-2.5のシミュレーション

入力信号V(in)振幅9Vの矩形波に対して、

出力信号V(out)振幅が2.5Vに制限されており、制限電圧が変更されていることが分かります。

以上のように、ぜひ部品モデルの追加方法を習得してLTspiceを活用してください。

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