
- トランジスタの仕組みと役割を知りたい。
- トランジスタはどのように使われているの?
このような疑問にお答えします。
電子回路を10年、仕事を通じて勉強しています。
トランジスタは最初に勉強する部品といっても過言ではありません。
色々な回路で使われるほど基本的な部品なので、わかりやすく説明します。
※ 初心者でも挫折しないトランジスタ教材(無料公開あり)
トランジスタとは

トランジスタとは以下の特徴をもつ電子部品です。
- コレクタ端子、エミッタ端子、ベース端子の3つの端子から構成される
- 電流を増幅することができる
- スイッチのようにON/OFFする素子として利用できる
なお、ここでいうトランジスタはバイポーラトランジスタのことです。
トランジスタの仕組み
トランジスタは、ベース端子に電流を流すことで動作します。
理由は、ベース端子に電流を流すと、電流の流れを止める「空乏層」という領域がほとんどなくなるからです。
トランジスタには、NPNトランジスタとPNPトランジスタがありますが、
ここでは良く使われるNPNトランジスタで動作を説明します。
NPNトランジスタ
NPNトランジスタは、ベース端子に電流を流さないと「空乏層」という領域ができ、電流を流すことができません。

ベース電流に電流を流すと「空乏層」という領域がほとんどなくなるので、電流を流すことができます。

このように、ベース端子に電流を流すとトランジスタは動作することができます。
この仕組みを利用して、
トランジスタは電流を増幅したり、スイッチのようにON/OFFしたりすることができます。
トランジスタの2つの役割
電子回路におけるトランジスタの役割は2つです。
- 電流を増幅する
- スイッチのようにON/OFFする
電流を増幅する
トランジスタには増幅率という特性があります。
例えば、増幅率が100だったとします。
ベース端子に1mAを流すと、コレクタからエミッタに100mAを流すことができます。

これは、ベース端子の電流 1mA × 増幅率 100 = 100mA ということです。
このように、トランジスタを使うと、電流を増幅することができます。
スイッチのようにON/OFFする
トランジスタはスイッチのように動作する性質があります。
ベース端子に電流を流さないと、コレクタからエミッタへ電流が流れないことは、これまで説明した通りです。

このトランジスタをスイッチに置き変えてみます。
スイッチをOFFすると、同じようにコレクタからエミッタへ電流が流れません。
また、ベース端子に電流を流すと、コレクタからエミッタへ電流が流れますよね。

このトランジスタもスイッチに置き変えてみます。
スイッチをONすると、同じようにコレクタからエミッタへ電流が流れます。
つまり、ベース端子に電流を流すか流さないかによって、
コレクタ端子とエミッタ端子の間をスイッチのようにON/OFFすることができます。
このようにトランジスタは電子回路において
「電流を増幅する」「スイッチのようにON/OFFする」という使い方をします。
トランジスタの使用方法
トランジスタは
「電流を増幅する」「スイッチのようにON/OFFする」
という使い方ができることが分かりました。
これらが実際に使われている回路として、一番わかりやすいのがLEDの点灯回路です。
500mAで点灯するパワーLEDを例に説明します。
マイコン(CPU)から出力できる電流はせいぜい数十mA程度なので、
500mAのLEDを光らせることはできません。
こういうときにトランジスタを使えば、LEDを光らせることができます。

トランジスタは増幅率 500 のものを使用します。
そうすると、
CPUからベース端子への電流 1mA × 増幅率 500 = 500mA
の電流をコレクタからエミッタに流すことができるようになります。
つまり、LEDに500mAを流せるようになり、LEDを光らせることができるのです。
トランジスタの「電流を増幅する」という使い方をしています。
さらに、LEDを光らせたり消したりという動作をしたい場合は、
「スイッチのようにON/OFFする」という使い方を利用します。

CPUから1秒間隔でベース端子への電流を流したり流さなかったりすると、
コレクタ端子とエミッタ端子の間が1秒間隔でONとOFFの状態を繰り返します。
つまり、LEDを1秒間隔で光らせたり消したりという点滅動作を実現することができるのです。
まとめ
トランジスタの仕組みと役割について解説しました。
トランジスタは電子回路に欠かせない基本素子であり、アンプやスイッチとして幅広く利用されています。
仕組みを理解することで、電子工作や回路設計に応用できるようになります。
実際に試してみよう!
トランジスタの仕組みを理解するには、実際に回路を組んでみるのが一番です。
ここでは、ブレッドボードを使って LEDを点灯させる基本的なトランジスタ回路 を作るのに必要な部品を紹介します。
必要な部品
- NPNトランジスタ 2N3904
-
小信号用の定番トランジスタで、LED点灯やスイッチ回路の実験に最適です。
👉 NPNトランジスタ 2N3904(100個入りセット)
入門用として世界的に使われており、初心者でも扱いやすい部品です。 - 抵抗セット
-
330Ω〜1kΩの抵抗を使えば、LEDの点灯回路をすぐに試せます。
👉 抵抗セット(1/4W、600本セット)
基礎実験には1/4Wで十分ですが、大きな電流を流す回路では1/2W以上を使うと安全です。 - ブレッドボード 830穴
-
はんだ付け不要で、部品を挿すだけで回路を組める基礎実験用のボードです。
👉 ブレッドボード 830穴
回路の変更や修正も簡単にできるので、初心者に最適です。 - ジャンパワイヤセット
-
ブレッドボードに部品同士を接続するための配線コードです。
👉 ジャンパワイヤセット
オス-オス/オス-メス/メス-メスの3種類があると汎用性が高まります。 - USB 5Vブレッドボード電源モジュール
-
ブレッドボードに直接差し込み、安定した5Vや3.3Vを供給できます。
👉 USB 5V電源モジュール
手軽に電源を取れるのが利点です。 - デジタルマルチメータ(テスター)
-
電圧や電流を測定することで、トランジスタの動作を実際に確認できます。
👉 AstroAI デジタルテスター
安価な入門機から高精度な機種までありますが、まずはシンプルなものがおすすめです。
トランジスタはメーカーや型番によって ピン配置が異なる場合 があります。
また、耐えられる電圧や電流も製品によって違います。
実際に回路を組むときは、必ず データシートでピン配置や定格を確認してください。
測定に便利なツール
実験をすると「電流は本当に増幅されているのか?」「スイッチのように動作しているのか?」が気になるはずです。
そんなときに役立つのが測定器です。
・電流や電圧を手軽に確認するなら
→ おすすめデジタルマルチメータ
・波形を見て動作を理解したいなら
→ おすすめオシロスコープ
・安定した電源で安全に実験するなら
→ おすすめ直流安定化電源
おすすめ学習リソース
トランジスタは電子回路の入口にすぎません。
より深く学びたい方には、次の学習リソースがおすすめです。
【教材】トランジスタ増幅回路の設計講座
・第1章
トランジスタ増幅回路の基礎知識
・第2章
固定バイアス回路の設計
・第3章
自己バイアス回路の設計
・第4章
電流帰還バイアス回路の設計
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おまけ:ディジタル回路のMIL記号はトランジスタで表現できる
ディジタル回路のMIL記号は以下の記号のことです。

このMIL記号はトランジスタと抵抗で表現することができます。
NANDを例に説明します。
NANDの動作は以下の通りです。

A | B | Y |
0 | 0 | 1 |
0 | 1 | 1 |
1 | 0 | 1 |
1 | 1 | 0 |
AとBが両方とも1のときだけ、Yが0になります。
NANDをトランジスタと抵抗の回路で表現すると以下のようになります。

回路図「A」の電圧波形:V(a)の信号(青線)
回路図「B」の電圧波形:V(b)の信号(赤線)
回路図「Y」の電圧波形:V(y)の信号(緑線)
これは電子回路シミュレータLTspiceでNAND回路をシミュレーションした結果です。
5Vを「1」とすると、上図のようになります。
先程の表と同じように、AとBが両方とも1のときだけ、Yが0になっているのが分かりますね。
これはトランジスタを「スイッチのようにON/OFFする」という使い方をすることで実現しています。
このようにディジタル回路のMIL記号はトランジスタと抵抗で表現することができるのです。