
- MOSFETの構造を理解したい
- MOSFETの動作原理を知りたい
- NチャネルだけでなくPチャネルの構造と動作原理も理解したい
こんな質問にお答えします。
この記事を書いている私は、電子回路設計者として約10年になります。
新人の頃、
バイポーラトランジスタの構造はわかるけど、MOSFETの構造や原理がよくわからない
という時期がありました。
今ではわかるようになりましたので、経験に基づいて解説したいと思います。
本記事を読み終えると、MOSFETの構造や動作原理がわかるようになりますよ。
3分で読めますので、ぜひ最後までご覧ください。
MOSFETの構造と動作原理
MOSFETの構造を大別すると4つに分類できます。
- NチャネルMOSFET エンハンスメント型
- NチャネルMOSFET デプレッション型
- PチャネルMOSFET エンハンスメント型
- PチャネルMOSFET デプレッション型
分け方として、
まずは「MOSFETを通過する電流の電荷」が、マイナスとプラスで分けることができます。
マイナスの電荷 → NチャネルMOSFET
プラスの電荷 → PチャネルMOSFET
次に、
ゲート端子への入力信号が0のとき、「MOSFETの導通状態」が、OFFとONで分けることができます。
MOSFETの導通状態 OFF → エンハンスメント型
MOSFETの導通状態 ON → デプレッション型
具体的に1つずつ解説していきます。
NチャネルMOSFETの構造
NチャネルMOSFETのエンハンスメント型とデプレッション型
【NチャネルMOSFET エンハンスメント型】

【NチャネルMOSFET デプレッション型】

NチャネルMOSFETの構造図は、上記の通り。
先程、ゲート端子への入力信号が0のとき、MOSFETの導通状態がOFFとONで、
エンハンスメント型とデプレッション型に分けられると言いました。
上図を見ながら言い換えると、ゲート端子への入力信号が0のとき、チャネルが形成されているかどうかです。
エンハンスメント型のときは、チャネルが形成されていませんが、
デプレッション型のときは、チャネルが形成されています。
チャネルとは何かというと、「電流の経路」のことです。
このチャネルを通って、ドレインからソースに電流が流れます。
つまり、
チャネルが形成されていないと、ドレイン-ソース間が導通せず、
チャネルが形成されていると、ドレイン-ソース間が導通する、
ということです。
MOSFETの端子数は4端子?
構造図からわかる通り、
MOSFETには、ゲート(G)、ドレイン(D)、ソース(S)、ボディ(B)の4つの端子があります。
MOSFETって、ゲート(G)、ドレイン(D)、ソース(S)の3端子では?
ボディ(B)端子って何?
と考えた方も多いと思います。
確かに回路図やデータシートでみるMOSFETの記号は3端子です。
実はMOSFETの部品内部で、ボディはソースと接続されているのです。
なので、電子部品として使うときは3端子として扱われます。
ちなみに、ボディ(B)は、バックゲート、バルクとも言います。
NチャネルMOSFETの動作原理
エンハンスメント型の動作原理

N型半導体(図の青色の部分)には、マイナスの電荷が多く存在し、プラスの電荷が少し存在しています。
逆にP型半導体(図のオレンジ色の部分)には、
プラスの電荷が多く存在し、マイナスの電荷が少し存在しています。
ゲート-ソース間に電圧Vgsを印加すると、
ゲート端子はプラス
ボディ端子はマイナス
になります。
(ソース端子とボディ端子は、部品内部で接続されている)
よって、P型半導体の
プラスの電荷がボディ端子側に移動し、
マイナスの電荷がゲート端子側に移動します。
言い換えると、P型半導体の
プラスの電荷がゲート端子から遠ざかり、
マイナスの電荷がゲート端子に集まってきます。
つまり、
プラスの電荷がゲート端子から遠ざかり、プラスの電荷が存在しない状態になったところに、
マイナスの電荷が集まってきて、マイナスの電荷が存在するようになります。
これが、チャネルの形成です。
これで、ドレイン-ソース間が導通するようになります。
なお、Vgsの印加電圧を大きくしていくと、チャネルの厚みが大きくなり、多くの電流を流すことができます。
デプレッション型の動作原理
エンハンスメント型との違いは、Vgs=0のとき、あらかじめ薄くn型の層が形成されていることです。

これにより、Vgs=0のときでも、ドレイン-ソース間に電流を流すことができます。
エンハンスメント型の時と同様、
Vgsの印加電圧を大きくしていくと、チャネルの厚みが大きくなり、多くの電流を流すことができます。
ちなみに、Vgsを負の電圧にすると、
ゲート端子はマイナス
ボディ端子はプラス
になるので、チャネルが薄くなり、ドレイン-ソース間に電流は流れにくくなります。
PチャネルMOSFETの構造
PチャネルMOSFETのエンハンスメント型とデプレッション型
【PチャネルMOSFET エンハンスメント型】

【PチャネルMOSFET デプレッション型】

PチャネルMOSFETの構造図は上記の通り。
NチャネルMOSFETの構造と比べて、N型半導体とP型半導体を入れ替えただけです。
PチャネルMOSFETも、ゲート端子への入力信号が0のとき、チャネルが形成されているかどうかで、
エンハンスメント型とデプレッション型に分けることができます。
エンハンスメント型のときは、チャネルが形成されていませんが、
デプレッション型のときは、チャネルが形成されています。
NチャネルMOSFETのときと同じですね。
PチャネルMOSFETの動作原理
エンハンスメント型の動作原理

NチャネルMOSFETの動作原理でもいいましたが、
N型半導体には、マイナスの電荷が多く存在し、プラスの電荷が少し存在しています。
逆にP型半導体には、プラスの電荷が多く存在し、マイナスの電荷が少し存在しています。
ゲート-ソース間に電圧-Vgsを印加すると、
ゲート端子はマイナス
ボディ端子はプラス
になります。
(ソース端子とボディ端子は、部品内部で接続されている)
マイナスの電荷がゲート端子から遠ざかり、マイナスの電荷が存在しない状態になったところに、
プラスの電荷が集まってきて、プラスの電荷が存在するようになります。
チャネルの形成されて、ドレイン-ソース間が導通するようになります。
なお、-Vgsの印加電圧を大きくしていくと、チャネルの厚みが大きくなり、多くの電流を流すことができます。
NチャネルMOSFETの動作原理と比べて、プラスとマイナスが逆になっているだけですね。
デプレッション型の動作原理
エンハンスメント型との違いは、Vgs=0のとき、あらかじめ薄くp型の層が形成されていることです。

これにより、Vgs=0のときでも、ドレイン-ソース間に電流を流すことができます。
エンハンスメント型の時と同様、
-Vgsの印加電圧を大きくしていくと、チャネルの厚みが大きくなり、多くの電流を流すことができます。
デプレッション型も、NチャネルMOSFETのときと同じですね。
実際に動かして動作原理を確認しよう!
より理解を深めたい方は、自分で回路を組んで動かしてみましょう!
回路例

NチャネルMOSFET エンハンスメント型 で試してみるとわかりやすいです。
Vgsに印加電圧を「加える/加えない」でLEDの点灯状態が変わるからです。
Vgsに印加電圧を加える
→ チャネルが形成される
→ ドレイン(D)から ソース(S)に電流が流れる
→ LEDが点灯する
Vgsに印加電圧を加えない(0V)
→ チャネルが形成されない
→ ドレイン(D)から ソース(S)に電流が流れない
→ LEDが点灯しない
このようにLEDの点灯状態で動作原理を確認できます。
必要な部品
- MOSFET 2N7000
-
エンハンスメント型のNチャネルMOSFETで、LED点灯やスイッチ回路の実験に最適です。
👉 NチャネルMOSFET 2N7000(100個入りセット)
入門用として世界的に使われており、初心者でも扱いやすい部品です。 - 抵抗セット
-
330Ω〜1kΩの抵抗を使えば、LEDの点灯回路をすぐに試せます。
👉 抵抗セット(1/4W、600本セット)
基礎実験には1/4Wで十分ですが、大きな電流を流す回路では1/2W以上を使うと安全です。 - LEDセット
-
LEDは、電流を流すと発光する部品です。赤・黄・緑・青・白など、
👉 LEDセット(200個入り)
セットでそろえておくと、差し替えて実験することができるのでオススメです。 - ブレッドボード 830穴
-
はんだ付け不要で、部品を挿すだけで回路を組める基礎実験用のボードです。
👉 ブレッドボード 830穴
回路の変更や修正も簡単にできるので、初心者に最適です。 - ジャンパワイヤセット
-
ブレッドボードに部品同士を接続するための配線コードです。
👉 ジャンパワイヤセット
オス-オス/オス-メス/メス-メスの3種類があると汎用性が高まります。 - USB 5Vブレッドボード電源モジュール
-
ブレッドボードに直接差し込み、安定した5Vや3.3Vを供給できます。
👉 USB 5V電源モジュール
2つの電源を手軽に取れるのが利点です。 - デジタルマルチメータ(テスター)
-
電圧や電流を測定することで、トランジスタの動作を実際に確認できます。
👉 AstroAI デジタルテスター
安価な入門機から高精度な機種までありますが、まずはシンプルなものがおすすめです。
MOSFETはメーカーや型番によって ピン配置が異なる場合 があります。
また、耐えられる電圧や電流も製品によって違います。
実際に回路を組むときは、必ず データシートでピン配置や定格を確認してください。
測定に便利なツール
実験をすると「本当に電流は流れているのか?」「スイッチのように動作しているのか?」が気になるはずです。
・電流や電圧を手軽に確認するなら
→ おすすめデジタルマルチメータ
・波形を見て動作を理解したいなら
→ おすすめオシロスコープ
・安定した電源で安全に実験するなら
→ おすすめ直流安定化電源
測定器で確認したいという方は参考にしてください。
まとめ
MOSFETの構造と動作原理について解説しました。
MOSFETは、電子回路でスイッチやモータ制御など、幅広く使われている素子です。
動作原理を理解することで、電子工作や回路設計に応用できるようになります。
おすすめ学習リソース
MOSFETだけで理解することも大事ですが、
MOSFETをバイポーラトランジスタとセットで学ぶと理解が深まります。
そこでおすすめなのが、Udemyの講座です。
以下のような内容を 30分程度でコンパクトに学習 できます。
実務で使える電子部品知識 超入門(バイポーラトランジスタ・MOSFET)
・バイポーラトランジスタとは?
・MOSFETとは?
・IGBTとは?
・バイポーラトランジスタとMOSFETの違い
さらに電子回路をセミナー形式で学びたい人は、下記をどうぞ。
関連記事
おまけ:MOSFETの材料
MOSFETは日々、改良されており、性能も良くなっています。
今回紹介したMOSFETは最も一般的なもので、
半導体でよく使われる Si(シリコン)という材料で作られています。
最近は、材料に SiC(シリコンカーバイド)を使用したりして、
高性能(低オン抵抗、高耐圧)のMOSFETを実現しています。
また、パワーMOSFETも
「 DMOS(Double-Diffused MOSFET)」や「SJ(スーパージャンクション)」と呼ばれる構造で、
高性能(低オン抵抗、低損失)のMOSFETを実現しています。
とはいえ、MOSFETを扱う上で、
- SiC とか
- DMOS構造とか
- SJ構造とか
を理解する必要はなく、構造と動作原理については、今回の記事の内容で十分です。
この記事の内容で「MOSFETって、こんな風に動いているんだぁ」とわかれば、
細かな違いは、MOSFETのデータシートに記載している電気特性から判断しましょう。
本記事がMOSFETの理解に少しでもお役に立てば幸いです。