
- MOSFETって何?パワーMOSFETとの違いは?
- MOSFETの読み方を教えてください
- MOSFETの回路図記号は意味と覚え方を知りたい
こんな質問にお答えします。
この記事を書いている私は、電子回路設計者として約10年になります。
「トランジスタは知ってるんだけど、MOSFETの理解が浅い・・・」
そんな時期がありました。
今なら仕事でMOSFETを用いて電子回路の設計ができるようになりましたので、
その経験値に基づいて解説したいと思います。
本記事を読み終える頃には、MOSFETのことが分かるようになりますよ。
3分で読めますので、ぜひ最後までご覧ください。
MOSFETとは?読み方も解説
MOSFETはトランジスタの一種
MOSFETはトランジスタの一種です。
そもそもトランジスタは以下のように分類することができます。
- バイポーラトランジスタ(BJT)
- 電界効果トランジスタ(FET)
- 絶縁ゲート電界効果トランジスタ(MOSFET) ← これ
- 接合型電界効果トランジスタ(JFET)
- 絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)
この中にある電界効果トランジスタの1つです。
電界効果トランジスタは英語で Field Effect Transistor と訳され、
一般にFET(エフ イーティー)と呼ばれています。
またMOSFETは、
金属(Metal)、酸化膜(Oxide)、半導体(Semiconductor)の3層構造で出来ているので、
頭文字を取って、MOSと呼んでいます。

また絶縁ゲート電界効果トランジスタの「絶縁ゲート」は、
ゲート端子の金属と半導体の間に酸化膜を入れて絶縁しているので「絶縁ゲート」と呼んでいます。
MOSFETの読み方
MOSFETは、
モス エフ イーティー
モス トランジスタ
モスフェット
と呼んだりします。
経験的には、モス エフ イーティー と呼ぶ人が多いですね。
明らかに会話の流れからMOSFETの話をしている場合は、
MOS(モス)を省略して、FET(エフ イーティー)だけで表現することも多いです。
MOSFETの型番
MOSFETの型番は、あまり気にしないで良いです。
MOSFETには「NチャネルMOSFET」と「PチャネルMOSFET」の2種類のタイプがあります。
それぞれ、2SKと2SJから始まる型番で表現されます。
2SK:NチャネルMOSFET
2SJ:PチャネルMOSFET
例えば、
NチャネルMOSFETは、東芝製の 2SK2232、2SK4017 で、
PチャネルMOSFETは、東芝製の 2SJ334 があります。
しかし、両方とも生産中止予定です。
東芝のホームページでは、2SK2232 の後継品として TK30A06N1 が推奨されています。
近年は、色々なメーカがMOSFETを販売しており、
型番のルールもメーカ独自のもので統一性がありません。
例えば、
ローム:R6015ENZ
パナソニック:FC6546010R
KEC:KF10N60F
というように、メーカ独自の型番です。
なので、これからの時代は、あまり型番を気にしないで良いです。
パワーMOSFETとは?MOSFETとの違い
パワーMOSFETとは、その内部に数1000~数10万個のMOSFETを集積している素子です。
内部に集積されている個々のMOSFETは同じ定格で、同じ電流を流すことができます。
例えば、1個は10mA程度しか電流を流せなくても、1000個も集まれば10Aも流すことができるのです。
なので、大電流を扱うパワー素子という意味で、パワーMOSFETと呼ばれます。
ものにもよりますが、私の経験的に許容できる電力は、10~300W程度です。
よくある質問:MOSFETで SiC とは何ですか?
MOSFETを構成する半導体材料の一つです。
MOSFETは、半導体でよく使われる Si(シリコン)で作られるのが一般的です。
日々、MOSFETの性能は改良されており、
近年では SiC(シリコンカーバイド)を使用して高性能(高耐圧、低オン抵抗)を実現しています。
とはいえ、MOSFETを使って電子回路を設計する上で、半導体材料まで気にする必要はありません。
設計する際は、データシートの電気特性をみながら、使用するMOSFETを選定するようにしましょう。
MOSFETの回路図記号
回路図記号は4種類
MOSFETには「NチャネルMOSFET」と「PチャネルMOSFET」の2種類のタイプがあるといいました。
さらに、エンハンスメント型とデプレッション型に分けることができます。
よって、MOSFETの回路図記号は4種類あります。
【NチャネルMOSFET エンハンスメント型】

【PチャネルMOSFET エンハンスメント型】

【NチャネルMOSFET デプレッション型】

【PチャネルMOSFET デプレッション型】

MOSFETはゲート(G)、ドレイン(D)、ソース(S)の3端子から構成され、回路図記号もそのようになっています。
しかし、本当は4端子から構成されますので、その解説をしていきます。
本当は4端子
MOSFETの端子はゲート(G)、ドレイン(D)、ソース(S)以外にも、ボディ(B)という端子があります。
どのタイプのMOSFETでも同じなので、NチャネルMOSFETのエンハンスメント型で解説します。

4端子の回路図記号は上図の通りです。
なぜ4端子なのかというと、MOSFETがそういう構造をしているからです。

では、なぜ回路図記号や実際の部品は3端子なのかというと、
実は部品内部(パッケージ内部)でソースとボディが接続されているからです。

なので、実際は3端子として使用されます。
なお、ボディ(B)端子は、バックゲート、バルクとも言います。
MOSFETの回路図記号の覚え方
MOSFETの回路図記号って覚えずらいですよね。
回路図記号は4種類ありますが、異なる点は以下の2つです。
- エンハンスメント型とデプレッション型の違い:点線と実線
- NチャネルとPチャネルの違い:矢印の向き
これらを区別して覚えるには、構造と一緒に理解すると良いです。
エンハンスメント型とデプレッション型の違い:点線と実線
【エンハンスメント型のNチャネルMOSFET】

【デプレッション型のNチャネルMOSFET】

上図の通り、
エンハンスメント型 → 点線
デプレッション型 → 実線
と覚えましょう。
理由は以下の通り。
エンハンスメント型は、
Vgs=0のとき(ゲート端子に電圧を印加してないとき)、
チャネル(電流の経路)が形成されていない
→ ソース-ドレイン間が導通しない
なので、点線で表現できます。
デプレッション型は、
Vgs=0のとき(ゲート端子に電圧を印加してないとき)、
チャネル(電流の経路)が形成されている
→ ソース-ドレイン間が導通する
なので、実線で表現できます。
よって、ゲート端子に電圧を印加してないとき、
エンハンスメント型は、ソース-ドレイン間が導通しないので、点線
デプレッション型は、ソース-ドレイン間が導通するので、実線
というように覚えると良いでしょう。
NチャネルとPチャネルの違い:矢印の向き
【デプレッション型のNチャネルMOSFET】

【デプレッション型のPチャネルMOSFET】

上図の通り、
矢印の向きは「P→Nの向き」
と覚えましょう。
理由は以下の通り。
半導体のPとNは、
P:Positive = 正 = +(プラス)
N:Negative = 負 = -(マイナス)
という意味です。
なので、プラスからマイナスの方向と考えた方が覚えやすいと思います。
よって、
矢印の向きは「P→Nの向き」
というように覚えると良いでしょう。
なお、MOSFETの構造や動作原理について詳しく知りたい方は、
MOSFETの構造図と動作原理【NチャネルとPチャネル】の記事もどうぞ。
実際に動かして動作原理を確認しよう!
MOSFETの記号を見ただけでは、イメージしづらいと思います。
そんな方は、実際に回路を組んで動かしてみましょう!
回路例

NチャネルMOSFET エンハンスメント型 を使うと、記号と実際の動作の関係がよくわかります。
ゲート(G)に電圧を「加える/加えない」で、
ドレイン(D)とソース(S)の間の電流の流れ方が変わり、LEDの点灯状態も変化します。
ゲート(G)に電圧を加える
→ チャネル(電流の経路)が形成される
→ ソース(S)-ドレイン(D)間が導通する
→ ドレイン(D)からソース(S)に電流が流れる
→ LEDが点灯する
ゲート(G)に電圧を加えない(0V)
→ チャネル(電流の経路)が形成されない
→ ソース(S)-ドレイン(D)間が導通しない
→ ドレイン(D)からソース(S)に電流が流れない
→ LEDが点灯しない
このように、回路図記号で見た「ゲート」「ドレイン」「ソース」の働きを、実際の回路で確かめることができます。
必要な部品
- MOSFET 2N7000
-
エンハンスメント型のNチャネルMOSFETで、LED点灯やスイッチ動作の確認に最適です。
👉 NチャネルMOSFET 2N7000(100個入りセット)
世界中で使われている入門定番部品で、初心者でも扱いやすいモデルです。 - 抵抗セット
-
330Ω〜1kΩの抵抗を使えば、LEDの点灯回路を簡単に構成できます。
👉 抵抗セット(1/4W、600本セット)
基礎実験では1/4Wで十分ですが、電流が多い場合は1/2W以上を使うと安心です。 - LEDセット
-
電流を流すと光る部品で、動作確認がしやすいのが特徴です。
👉 LEDセット(200個入り)
赤や緑など複数の色をそろえておくと、比較実験も楽しめます。 - ブレッドボード 830穴
-
はんだ付け不要で、部品を挿すだけで回路を組める実験用ボードです。
👉 ブレッドボード 830穴
変更や修正も簡単で、電子回路の基礎練習に最適です。 - ジャンパワイヤセット
-
ブレッドボード上で部品同士をつなぐための配線コードです。
👉 ジャンパワイヤセット
オス-オス/オス-メス/メス-メスの3種類をそろえておくと応用が利きます。 - USB 5Vブレッドボード電源モジュール
-
ブレッドボードに直接差し込み、安定した5Vや3.3Vを供給できます。
👉 USB 5V電源モジュール
2系統の電源を手軽に取り出せるため、実験用途に最適です。 - デジタルマルチメータ(テスター)
-
ゲート電圧やドレイン電流を測定することで、MOSFETの動作を定量的に確認できます。
👉 AstroAI デジタルテスター
入門機でも十分に実験できます。
MOSFETはメーカーや型番によって ピン配置が異なる場合 があります。
また、耐えられる電圧や電流も製品によって違います。
実際に回路を組むときは、必ず データシートでピン配置や定格を確認してください。
測定に便利なツール
「本当にスイッチのように動作しているの?」「どのくらいの電流が流れているの?」を確認したい方は、
測定器を使ってみましょう。
- 電流や電圧を確認するなら
→ おすすめデジタルマルチメータ - 波形を見て動作を詳しく知りたいなら
→ おすすめオシロスコープ - 安定した電源で安全に実験するなら
→ おすすめ直流安定化電源
測定器を使うことで、回路図記号が示す動作をより深く理解できます。
まとめ
今回はMOSFETについて解説しました。
MOSFETはモータドライブ回路や論理回路に広く利用されているので、理解しておいた方が良いと思います。
本記事がMOSFETの理解に少しでもお役に立てば幸いです。
おすすめ学習リソース
MOSFETはスイッチング回路や増幅回路など、電子回路の応用範囲が非常に広い素子です。
より深く理解したい方や、設計の基礎から学びたい方には次の学習リソースがおすすめです。