- トランジスタの使い方や使用例を知りたい
- PNPトランジスタ、フォトトランジスタ、ダーリントントランジスタ、デジタルトランジスタ・・・、
色々なトランジスタがあるけど、どのような用途があるの?
このような疑問にお答えします。
本記事を書いている私は電子回路設計歴10年です。
電子回路を設計するとき、トランジスタはいつも使いますね。
その経験に基づいて、様々なトランジスタの使い方を解説します。
5分程度で読めますので、ぜひご覧ください。
トランジスタの使い方は「増幅」と「スイッチ」
トランジスタは以下の2つの使い方があります。
- 増幅
- スイッチ
電流の増幅については、
1mAをトランジスタに入力すると100mAを出力する
というような使い方です。
また、スイッチについては、
トランジスタに信号を入力する → トランジスタからONを出力する
トランジスタに信号を入力しない → トランジスタからOFFを出力する
というような使い方です。
このようにトランジスタは「スイッチ」や「増幅」という用途で使うことができます。
具体的な使用例は、以下の記事で解説してるので、参考にどうぞ。
» トランジスタとは?トランジスタの仕組みをわかりやすく解説
どの2つの間に電流を流せば、どの2つが導通するのですか?
ベース-エミッタ間に電流を流せば、コレクタ-エミッタ間が導通します。
ベースが+、エミッタが-です。
定格電流はどのくらいですか?
代表的なトランジスタ 2SC1815 のデータシートを見てみましょう。
絶対最大定格(Ta=25℃)
東芝トランジスタ 2SC1815 のデータシートより抜粋
入力の定格電圧 → エミッタ-ベース間電圧:5V
入力の定格電流 → ベース電流:50mA
出力の定格電圧 → コレクタ-エミッタ間電圧:50V
出力の定格電流 → コレクタ電流:150mA
となっています。
ただし、この値はトランジスタによって様々なので、
使用するトランジスタのデータシートを必ず確認するようにしましょう。
PNPトランジスタの使い方
これまで解説したのはNPNトランジスタですが、PNPトランジスタの使い方も「増幅」と「スイッチ」です。
しかし、全く同じ使い方をするわけではありません。
「スイッチ」を例として、使い方の違いを解説します。
PNPとNPNトランジスタの使い方の違い
トランジスタで、LEDを点灯する用途を考えてみます。
左図:PNPトランジスタのLED点灯回路
右図:NPNトランジスタのLED点灯回路
使い方の違いは、
PNPトランジスタ → 電源側
NPNトランジスタ → GND側
という配置になります。
両方ともLEDを点灯できるので、
「NPNトランジスタの使い方だけ知っていれば良いのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、以下の2つの特徴をもったLEDは、NPNではなく、PNPトランジスタで点灯します。
- RGBフルカラーLED
- カソードコモン
秋月電子で入手できるLED『OSTA5131A』の使用例で解説します。
RGBフルカラーLED
RGBフルカラーLEDの外観図
OSTA5131A のデータシートより抜粋
RGBフルカラーLEDには、LED1個の中に、
緑(G:グリーン)のLED
青(B:ブルー)のLED
赤(R:レッド)のLED
が内蔵されています。
つまり、
緑のLEDに電流を流す → RGBフルカラーLEDは緑に点灯
青のLEDに電流を流す → RGBフルカラーLEDは青に点灯
赤のLEDに電流を流す → RGBフルカラーLEDは赤に点灯
ということです。
この3色が内蔵されたRGBフルカラーLEDが1個あれば、様々な色に点灯できます。
なお、図の①~④の番号は、「RGBフルカラーLEDの外観図」の端子番号①~④のことです。
カソードコモン
カソードコモンとは、3色LEDの「カソード側が内部で接続されている」ということです。
簡単に説明しますと、LEDにはアノードからカソードに電流が流れます。
カソードコモンは、3色LEDのカソードが内部で接続されているのです。
それでは、なぜ「RGBフルカラーLED 」「カソードコモン」のLEDだと、
PNPトランジスタが必要なのか、みていきます。
NPNトランジスタで点灯すると、色を変えられない
NPNトランジスタでLEDを点灯する場合、トランジスタはGND側になります。
これでLEDを点灯すると、3色のLEDに電流が流れ、白色に点灯します。
(赤、緑、青が全て光ると白色になる)
つまり、3色を同時に点灯することはできますが、赤、緑、青の1つずつ点灯することができません。
しかし、PNPトランジスタなら、それぞれの色のLEDを点灯することができます。
PNPトランジスタなら色を変えられる
PNPトランジスタで点灯する場合は、上図のような回路になります。
トランジスタの数は増えますが、3色のLEDに流す電流をコントロールできるので、
赤、緑、青のそれぞれを光らせることができます。
例えば、赤色に点灯する場合は、赤色のLEDに繋がるPNPトランジスタをONにして電流を流せば良いのです。
なので、「RGBフルカラーLED 」「カソードコモン」のLEDには、PNPトランジスタが必要になります。
フォトトランジスタの使い方
フォトトランジスタは光を検出できる
フォトトランジスタも使い方としては「増幅」と「スイッチ」なのですが、
トランジスタとの違いは、光を検出できることです。
なぜなら、フォトトランジスタには光を電流に変換する部品があるからです。
(これをフォトダイオードと言います。)
具体的に解説すると、トランジスタは、
ベース端子に電流を入力することで、コレクタ-エミッタ間が導通し電流が流れます。
それに対してフォトトランジスタは、
ベース-コレクタ間に光を電流に変換する部品があり、この部品に光を当てると電流が流れます。
その結果、ベース端子に電流が流れ、コレクタ-エミッタ間が導通し電流が流れます。
なので、フォトトランジスタは光を検出することができます。
「スイッチ」を例として、具体的な使用例を解説します。
フォトトランジスタをスイッチとして使う用途
フォトトランジスタをスイッチとして使うことで、
遠くにあるライトの点灯/消灯をコントロールすることができます。
なぜなら、
フォトトランジスタが光を検出する → ライトをONする
フォトトランジスタが光を検出しない → ライトをOFFする
という使い方ができるから。
具体的には、以下のような回路で検出できます。
送信機から光を発射して、その光をフォトトランジスタが検出すると、コレクタ-エミッタ間が導通します。
コレクタ-エミッタ間が導通するため、CPUには電源が入力されます。
それに対して、送信機から光を発射しないと、フォトトランジスタが光を検出しないので、
コレクタ-エミッタ間が導通しません。
なので、プルダウン抵抗(GNDに接続している抵抗)によって、CPUにはGND(0V)が入力されます。
つまり、
CPUに電源を入力 → ライトをON(点灯)する
CPUにGND(0V)を入力 → ライトをOFF(消灯)する
というようにCPUでコントロールします。
このようにフォトトランジスタをスイッチのように使うことで、
遠くのライトを点灯したり、消灯したりすることができます。
使用例としては、蛍光灯やテレビをリモコンでON/OFFするような使い方ができますね。
デジタルトランジスタ(デジトラ)の使い方
デジタルトランジスタは、トランジスタと同じく、スイッチのような用途に使うことができます。
トランジスタをスイッチとして使用するとき、
ベース端子に抵抗を接続したり、ベース-エミッタ間に抵抗を接続したりしますが、
デジタルトランジスタを使用すると、これらの抵抗を接続する必要がありません。
なぜなら、内部に抵抗を内蔵しているからです。
内部に抵抗を内蔵していると、以下のメリットがあります。
- 入力電圧を入力電流に変換できる
- ノイズ電流による誤動作を防止する
- 回路を小型化する
1 と 2 は抵抗を内蔵しているメリットというよりは、トランジスタに抵抗を接続するメリットといった方が正確です。
純粋に抵抗を内蔵しているメリットは 3 になります。
具体的に解説します。
1. 入力電圧を入力電流に変換できる
トランジスタは、電流を入力することで動作します。
しかし入力信号は、ほとんど電圧です。
トランジスタのベース端子に抵抗R1があると、入力電圧を入力電流に変換することができます。
実際に、デジタルトランジスタ DTC143EL で入力電圧を電流に変換します。
デジタルトランジスタの回路図記号
DTC143EL のデータシートより抜粋
電気的特性(Tq=25℃)
デジタルトランジスタの電気的特性
DTC143EL のデータシートより抜粋
R1 = typ 4.7kΩ、R2/R1 = 1 となっているので、
R2 = R1 = 4.7kΩ
となります。
また、トランジスタのベース-エミッタ間の電圧は、一般的に 0.7V程度です。
よって、以下のように変換できます。
入力電圧を 3.3V とすると、
R1に流れる電流 I1 = ( 3.3V– 0.7V ) / 4.7kΩ = 0.55mA
となります。
つまり、
入力電圧 3.3V → 入力電流 0.55mA
と変換することができました。
なお、入力電流は 0.55mA ですが、
トランジスタのベース端子に入力される電流は、もう少し小さい値になります。
なぜなら、ベース-エミッタ間の抵抗R2(4.7kΩ)に電流が流れるからです。
どのくらいかというと、
R2に流れる電流 I2 = 0.7V / 4.7kΩ = 0.15mA
なので、
トランジスタのベース電流 IB = 0.55mA – 0.15mA = 0.40mA
となります。
いずれにせよ、入力電圧を入力電流に変換できます。
2. ノイズ電流による誤動作を防止する
ノイズ電流は「流れてほしくない電流」なのですが、
ベース端子に流れてしまうことがあり、トランジスタを誤動作させることがあります。
「誤動作させることがある」というのは、
ノイズ電流によって、トランジスタが誤動作しないかもしれない
ということです。
なぜなら、ノイズ電流は、電流の大きさが小さいから。
トランジスタを動作させる電流の大きさでなければ、トランジスタは誤動作しません。
しかし、ベース端子にノイズ電流が侵入すると、トランジスタを通過してしまうため、
絶対に誤動作しないとは言い切れないのです。
そこで、誤動作しないようにするために「ベース-エミッタ間に抵抗を接続する」という方法があります。
この方法であれば、トランジスタにノイズ電流は流れず、抵抗R2にノイズ電流が流れるので、
トランジスタが誤動作しなくなります。
なので、ベース-エミッタ間の抵抗R2は、トランジスタの誤動作を防止する役割があります。
「本当にノイズ電流は、トランジスタのベース端子ではなく、ベース-エミッタ間の抵抗R2に流れるの?」
と思うかもしれません。
実際にノイズ電流の大半は抵抗R2に流れます。
それは、R2の抵抗値の方が小さいからです。
具体的に解説するため、ノイズ電流が1uAのときのトランジスタの抵抗値を考えてみます。
仮にトランジスタのベース端子に 1uA が全て流れるとすると、
ベース-エミッタ間の電圧は 0.7V 固定なので、
トランジスタの抵抗値 = 0.7V / 1uA = 700kΩ
となります。
DTC143ELのベース-エミッタ間の抵抗R2は4.7kΩでした。
100倍以上も大きな値です。
電流は抵抗値の小さい方に流れようとしますので、
ノイズ電流は、ほとんど抵抗R2を流れるということになります。
なので、ベース端子には、ほとんどノイズ電流は流れず、トランジスタは誤動作しにくくなります。
3. 回路を小型化する
抵抗を内蔵したことにより、回路を小型化できます。
例えば、デジタルトランジスタ DTC143EL は抵抗を内蔵していますが、
有名な東芝のトランジスタ 2SC1815 とほとんど同じサイズです。
つまり、トランジスタと同じサイズのまま、抵抗を削減できるので、回路を小型化することができます。
ダーリントントランジスタの使い方
ダーリントントランジスタは、大きな電流を流す使い方をします。
なぜなら、トランジスタを2個接続することで、電流増幅率を大きくすることができるからです。
具体的にいうと、
トランジスタ1個目の電流増幅率 → hfe1
トランジスタ2個目の電流増幅率 → hfe2
とすると、
ダーリントントランジスタの電流増幅率 hfe = hfe1 × hfe2
となり、電流増幅率を大きくすることができます。
なので、ダーリントントランジスタは大きな電流を流す使い方をします。
ダーリントントランジスタの使い方を理解したい方は、以下の記事を参考にどうぞ。
使用例を用いて、より詳しく解説しています。
» ダーリントントランジスタを使った電子回路の問題を解く方法
まとめ
今回は、様々なトランジスタの使い方について解説しました。
いろいろなトランジスタの使い方について理解できたでしょうか?
トランジスタには、色々な用途や使用例があるので、それらの理解に本記事が少しでもお役に立てば幸いです。
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・第1章
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・第2章
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・第3章
自己バイアス回路の設計
・第4章
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