トランジスタ

トランジスタ定電流回路の原理【LED定電流回路の解説もあり】

トランジスタ定電流回路のイメージ図

  • トランジスタの定電流回路って何ですか?
  • トランジスタ定電流回路の原理を理解したい
  • LEDの定電流回路をトランジスタで作る方法を知りたい

このような質問にお答えします。

 

 

本記事を書いている私は電子回路設計歴10年です。

今回はトランジスタの定電流回路について解説します。

特に私の経験に基づいて、よく使われる回路を解説します。

5分程度で読めますので、ぜひご覧ください。

 

 

トランジスタの定電流回路とは?

トランジスタの定電流回路とは、その言葉の通り、

トランジスタを使って、一定の電流を流す回路です。

 

トランジスタ定電流回路

 

動作原理や設計方法については、後述しますが、

そもそも、なぜ、一定の電流値を流す必要があるのでしょうか?

 

例えば、LEDや電球の光を安定させるためです。

家に帰って、電気をつけたとき、明かりがバラついてたり、チラついてたりすると、気が散ってしまいますよね。

 

また、センサから測定値を読み取るためにも、一定の電流を流す必要があります。

 

例えば、温度を測定する際に、測温抵抗体(そくおんていこうたい)というセンサを使います。

これは、温度の変化に応じて、抵抗値が変化するセンサです。

 

温度 抵抗
50℃ 119.40Ω
25℃ 109.73Ω
0℃ 100.00Ω
-25℃ 90.19Ω

 

オームの法則は、『電圧[V] = 抵抗[Ω] × 電流[A]』なので、

この測温抵抗体というセンサに一定の電流を流すと、抵抗の変化がそのまま電圧の変化となります。

 

一定の電流値を1mAとした場合:

電圧 抵抗 電流
119.40mV 119.40Ω 1mA
109.73mV 109.73Ω 1mA
100.00mV 100.00Ω 1mA
90.19mV 90.19Ω 1mA

 

CPUは、電流の変化ではなく、電圧の変化をAD変換して読み取ります。

なので、センサの測定値をCPUが読み取ようにするため、電流値を一定にする必要があるのです。

 

よくある質問:
トランジスタの等価回路は、なぜ定電流回路で表すことができるのですか?

定電流回路というか、電流源ですね。

その理由については、こちらの記事で解説してますので参考にどうぞ。

参考記事:トランジスタ等価回路の作り方・書き方【小信号や増幅回路の等価回路】

 

 

トランジスタ定電流回路の原理

トランジスタの定電流回路では、抵抗、トランジスタ、ツェナーダイオードなどを組み合わせることで、

色々な定電流回路を作ることができます。

 

しかし、トランジスタ定電流回路を理解する上で、本質的な原理は一つだけです。

それは、抵抗に一定の電圧を加えるということです。

 

トランジスタ定電流回路の原理

 

上図の【抵抗R1】と【抵抗R1に加わる電圧】に注目します。

なお、抵抗R1に加わる電圧は、Vref - VBE です。

※ Vrefは基準電圧で、12V, 5V, 3.3V, 1.2Vなどの電圧のこと

 

オームの法則により、

抵抗R1に流れる電流 = 抵抗R1に加わる電圧 / 抵抗R1

となります。

 

例えば、

抵抗R1 = 1kΩ
Vref = 5V
VBE = 0.7V

とした場合、

抵抗R1に流れる電流
= ( Vref - VBE ) / R1
= ( 5V - 0.7V ) / 1kΩ
= 4.3V / 1kΩ
= 4.3mA

となります。

 

実は、これが『一定の電流』です。4.3mAのまま変動しません。

抵抗R1に、Vref - VBE という『一定の電圧』を加えることで『一定の電流』を作っています。

 

つまり、

どのようにして抵抗R1に一定の電圧を加えるか

ということが、定電流を作る上で重要になります。

 

そのための方法として、トランジスタやツェナーダイオードが使われます。

 

今回は、私の経験上、トランジスタの定電流回路でよく使われる

『抵抗』と『トランジスタ』と『ツェナーダイオード』の組み合わせ

で解説していきます。

 

 

LEDの定電流回路をトランジスタで設計する方法

LEDの定電流回路を『抵抗』と『トランジスタ』と『ツェナーダイオード』で設計する方法

この回路は、抵抗に印加する一定の電圧を、ツェナーダイオードとトランジスタで作っています。

 

回路図は、以下の通り。

 

LED定電流回路をトランジスタで設計する方法

 

LEDに20mAの一定電流を流すように設計していきます。つまり抵抗R1にも20mA流れるということです。

 

ツェナーダイオードVZ1は、秋月電子でも手に入る【UDZV15B】にします。

 

電気的特性(Ta=25℃)
ローム製ツェナーダイオード UDZV15B のデータシートより抜粋

 

これにより、抵抗R1には、

ツェナー電圧Vz - VBE = 14.34V - 0.7V = 13.64V

という一定電圧が加わります。(今回はツェナー電圧のMIN値を使用しました)

 

LEDに20mAを流すため、抵抗R1の値を決めます。

 

抵抗R1の値

抵抗R1の値を求めます。

抵抗R1
= 抵抗R1に加わる電圧 / 一定の電流
=(ツェナー電圧Vz - VBE) / 一定の電流
= 13.64V / 20mA
= 682Ω
680Ω

 

次に、抵抗R2の値を求めましょう。

 

抵抗R2の値

オームの法則より、

抵抗R2 = 抵抗R2の両端電圧 / 抵抗R2に流れる電流

なので、

抵抗R2の両端電圧
抵抗R2に流れる電流

を先に求める必要があります。

 

抵抗R2の両端電圧は、

電源電圧 24V - ツェナー電圧 14.34V = 9.66V

です。

 

また、抵抗R2に流れる電流は、ツェナー電流 Iz + ベース電流 IB で求められます。

 

 

ツェナー電流 Iz は、先程のデータシートから、5.0mAです。

 

ぺース電流 IB は、トランジスタのhfeを100とすると、

IB = 一定の電流 / hfe = 20mA / 100 = 0.2mA

となります。

 

よって、抵抗R2に流れる電流は、

ツェナー電流 Iz + ベース電流 IB
= 5.0mA + 0.2mA
5.2mA

となります。

 

補足:
トランジスタのhfeやベース電流IBの求め方の意味が分からない人は、
こちらの記事を読めば理解できるので、参考にしてください。

参考記事:トランジスタのhfeとは?求め方から測定、ばらつき、温度特性まで

 

以上から、抵抗R2の値は、

抵抗R2
= 抵抗R2の両端電圧 / 抵抗R2に流れる電流
= 9.66V / 5.2mA
= 1.86kΩ
1.8kΩ

となります。

これで、抵抗とトランジスタとツェナーダイオードの定電流回路を設計することができました。

 

実際の動作を確認するため、シミュレーションしてみます。

 

LED定電流回路のシミュレーション

トランジスタのLED定電流回路シミュレーション

回路図「LED」の電流波形:I(led)の信号(赤線)
回路図「R1」の電流波形:I(R1)の信号(青線)
回路図「R2」の電流波形:I(R2)の信号(緑線)

 

シミュレーション結果をみると、

LED:20mA
R1:20mA
R2:5.2mA

となっており、計算結果とほとんど同じです。

問題なく、設計できていることが分かりますね。

 

よくある質問:
LED定電流回路のトランジスタを、そのままMOSFETに置き換えることはできますか?

そのままは不可能です。

トランジスタとMOSFETは動作原理が違うからです。

仮にLEDが点灯したとしても、偶然うまく点灯しただけで、正しい設計ではありませんので、止めた方が良いです。

 

よくある質問:
以下の定電流回路の動作原理を教えてください。

 

可変定電流回路

 

基本的に原理は同じです。この回路図を整理すると以下のようになります。

 

整理した可変定電流回路

回路図「R2」の電流波形:I(R2)の信号(赤線)
回路図「R1」の電流波形:I(R1)の信号(青線)
回路図「LED」の電流波形:I(led)の信号(緑線)

 

抵抗R1は、整理する前の抵抗R1、R3、R4の合成抵抗です。

 

抵抗R3とR4の合成抵抗をR34とすると

1/R34 = 1/R3 + 1/R4

R34 = (R3×R4) / (R3 + R4) ≒ 2Ω

抵抗R1 = R34 + 整理する前の抵抗R1 = 2Ω + 100Ω = 102Ω

となります。

 

結局のところ、トランジスタQ2の一定電圧(ベースエミッタ電圧VBE=0.7V)を抵抗R1に加えて、定電流を作っています。

抵抗R1に流れる電流 = VBE / R1 = 0.7V / 102Ω = 6.9mA ≒ 7mA

シミュレーション結果とほとんど同じですね。

 

ただし、LEDをGND側に接続しているので、LEDに流れる電流は、抵抗R1に流れる電流抵抗R2に流れる電流合計になります。

 

抵抗R2に流れる電流は、ほとんど一定です。

「トランジスタQ2のコレクタ-エミッタ電圧VCE」と「LEDの順電圧VF」の合計は2V程度ですので、

抵抗R2の両端電圧 V2 = V1 - ( VCE + VF ) = 12V - 2V = 10V

抵抗R2に流れる電流 = V2 / R2 = 10V / 1kΩ = 10mA

 

よって、

LEDに流れる電流
= 抵抗R1に流れる電流 + 抵抗R2に流れる電流
= 7mA + 10mA
17mA

となります。

 

シミュレーション結果をみると、

R2:約10mA
R1:約7mA
LED:約17mA

となっており、計算結果とほとんど同じですね。

 

余談ですが、抵抗R1を可変抵抗にすると、LEDに流れる電流を調整することができます。

 

抵抗R1の値は約100Ωですが、半分の50Ωにした場合、2倍の電流が流れます。

R1:100Ω → 7mA
R1:50Ω → 14mA

抵抗R2に流れる電流は10mAのままなので、

LEDに流れる電流は、14mA + 10mA = 24mA となります。

 

このように、可変抵抗でLEDに流れる電流を調整することができます。

 

 

オペアンプとトランジスタを使った定電流回路

オペアンプとトランジスタを使った定電流回路は以下の通り。

 

オペアンプとトランジスタの定電流回路

 

トランジスタ以外にもオペアンプを使っていますが、本質的なことは同じです。

どうやって抵抗に一定の電圧を加えるかということです。

 

オペアンプとトランジスタを使った定電流回路については、以下の記事で解説してますので参考にどうぞ。

参考記事:オペアンプの定電流回路【吐き出しとLEDから大電流FETと発振】

 

トランジスタ定電流回路のまとめ

今回は、トランジスタの定電流回路について解説しました。

少しはトランジスタの定電流回路について理解できたでしょうか?

 

私の経験では、今回紹介したトランジスタで構成される定電流回路はあまり見なくなってきました。

最近は、最後に紹介したオペアンプとトランジスタを使った定電流回路をよく使いますね。

本記事が少しでもお役に立てば幸いです。

 

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