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バイポーラトランジスタの構造と動作原理【わかりやすい簡単な解説】

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バイポーラトランジスタの構造と動作原理の図
  • バイポーラトランジスタの構造を知りたい
  • トランジスタの動作原理も知りたい
  • トランジスタの電流増幅作用って何ですか?

このような疑問にお答えします。

目次

電子回路を勉強して10年になります。

トランジスタの構造や動作原理って、かなり基本的なところですよね。

長く電子回路をやっていると、逆に基本的なところを忘れていくものです。

本記事では、電子回路の初心者から

「トランジスタって、どうやって動いてるんだっけ?」という電子回路の経験者の方まで

トランジスタの構造と動作原理をわかりやすく解説します。

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バイポーラトランジスタの構造

トランジスタの構造は2種類あります。

薄いp形半導体を2つのn形半導体ではさんだNPNトランジスタと、

薄いn形半導体を2つのp形半導体ではさんだPNPトランジスタです。

NPNトランジスタの構造

NPNトランジスタの構造

PNPトランジスタの構造

PNPトランジスタの構造

各端子は、それぞれエミッタ端子(E)、ベース端子(B)、コレクタ端子(C)と呼ばれています。

トランジスタを動作させるには、これらの端子に電源を接続し、

特定の半導体間に電圧を印加する必要があります。

なお、ここでいうトランジスタはバイポーラトランジスタのことです。

トランジスタの動作原理

PN接合ダイオードの動作原理

トランジスタの動作はpn接合ダイオードの動作原理を応用したものです。

PN接合ダイオードの構造

pn接合ダイオードには整流作用があり、

p形半導体がn形半導体よりも電位が高くなるような外部電圧を印加することで電流が流れます。

PN接合ダイオードの動作原理

電流が流れる方向を「順方向」といいます。
例えば、電流が流れる方向に電圧を印加することを「順方向電圧を印加する」と言います。

図に示す電源VFのFは順方向の意味の「Forword」
図に示す電源VRのRは逆方向の意味の「Reverse」

電流が流れる方向は、電子(-の電荷)の流れる方向とは逆向きになります。

p形半導体とn形半導体の接合部には、空乏層と呼ばれる領域があります。

順方向電圧を印加すると、この空乏層が狭くなり、
電子(-の電荷)と正孔(+の電荷)が接合面を超えてお互いの領域へ移動します。
つまり電流が流れます。

逆方向電圧を印加すると、この空乏層が広くなり、
電子(-の電荷)と正孔(+の電荷)が接合面を超えて移動することができません。
つまり電流は流れません。

トランジスタの動作原理(NPN)

トランジスタは以下の図に示すように、外部電圧を印加することで動作します。

トランジスタの動作原理と電子の流れ

ベース-エミッタ間に順方向電圧VFを印加すると、

エミッタ側の電子(-の電荷)がベース側のp形半導体に移動します。

ベース側では、p形半導体に移動してきた電子がコレクタ側のn形半導体に移動します。

その途中で電子の一部は正孔(+の電荷)と再結合し消滅します。

ここで「p形半導体に移動してきた電子がコレクタ側のn形半導体に移動します」という部分で、
「なぜ電子がコレクタ側のn形半導体に移動するのだろう?」と感じた方がいると思います。

その答えは、真ん中のp形半導体が薄く作られているからです。

ベース-エミッタ間に順方向電圧VFを印加すると、
エミッタ側の電子は真ん中のp形半導体に向かって移動します。

このとき、p形半導体は薄く作られているので、
そのままコレクタ側のn形半導体の方まで流れ込んでしまうというわけです。

p形半導体を薄く作る理由は他にもあります。

真ん中のp形半導体の幅を薄く作ることで、
エミッタ側のn形半導体からp形半導体に移動してきた電子は、
そのほとんどが再結合(消滅)することなく
コレクタ側のn形半導体に移動することができるようになります。

エミッタ側のn形半導体にあった電子が、コレクタ側のn形半導体まで移動すると、

逆方向電圧VRによって、電子がコレクタ端子まで誘導されることになります。

つまり、エミッタ端子の電子がコレクタ端子まで到達できるようになるのです。

エミッタ(emitter)から放出された電子(emit)を
コレクタ(collector)で集める(collect)と考えると、
それぞれの端子の名前と共に理解しやすいと思います。

「電子の流れる方向」と「電流の流れる方向」は逆方向なので、

コレクタ端子からエミッタ端子に電流が流れるということになります。

その電流の流れも表すと以下のような図になります。

トランジスタの動作原理と電流の流れ

エミッタ電流IEは、ベース-エミッタ間のpn接合に印加された順方向電圧VFの大きさに依存します。

順方向電圧VFが大きいほど、移動する電子の量も大きくなるということです。

また、コレクタ電流ICはエミッタ電流IEとほとんど同じ値になります。

真ん中のp形半導体が薄く作られているので、

電子(-の電荷)と正孔(+の電荷)が再結合(消滅)しにくいということです。

つまり、コレクタ電流ICの大きさを変えるには、エミッタ電流IEの大きさを変えれば良いということになります。

トランジスタの動作原理(PNP)

PNP形トランジスタで考える際は、

電子(-の電荷)と正孔(+の電荷)を入れ替え、順方向電圧VFと逆方向電圧VRの方向を反対向きにします。

そうすると、NPN形トランジスタで考えたときと同じように

エミッタ-ベース間のpn接合に順方向電圧が印加されることになります。

ベース-コレクタ間には逆方向電圧を印加することで、

エミッタ側の正孔(+の電荷)がコレクタ側まで移動することができ、

NPN形トランジスタの回路とは反対の方向にエミッタ電流とコレクタ電流が流れるということになります。

トランジスタ電流増幅作用の原理

トランジスタには、少ない電流を入力すると大きな電流が得られるという特性があります。

これを「電流増幅作用」と呼び、トランジスタを使った電流増幅回路には大きく分けて2種類あります。

  • ベース接地 ← これまで説明してきた回路
  • エミッタ接地

「コレクタ接地」もありますが、今回は省略します。

ベース接地の電流増幅率

ベース接地は、これまで説明してきたように、

ベース-エミッタ間に順方向電圧、ベース-コレクタ間に逆方向電圧を印加するタイプの回路です。

ベース接地の電流増幅作用の性能を表す電流増幅率hFBを求めてみます。

ベース接地の電流増幅率は、

hFB = IC / IE

という式で表され、hFB = 0.995程度の値です。

つまり、ほぼ「hFB ≒ 1」です。

別の言い方をすると「 IE ≒ IC 」ということで、エミッタ電流IEとコレクタ電流ICは、ほとんど同じ値ということです。

これは、先程も説明しましたが、

NPNトランジスタの真ん中のP形半導体を薄く作ることによって、

ほとんどの電子(-の電荷)が、正孔(+の電荷)と再結合(消滅)することなく、

エミッタ端子からコレクタ端子に移動することができるということになります。

なので、トランジスタは「少ない電流を入力すると大きな電流が得られる」といいましたが、

ベース接地の場合は、電流増幅率hFBは、ほぼ「1」になります。

「少ない電流で大きな電流が得られてないじゃん!」と言いたくなると思いますが、

「少ない電流で大きな電流が得られる」のは、次のエミッタ接地です。

エミッタ接地の電流増幅率

エミッタ接地の電流増幅回路は、以下のような回路になります。

トランジスタのエミッタ接地の動作原理と電流の流れ

エミッタ接地の電流増幅率は、

hFE = IC / IB

という式で表されます。

これをベース接地のhFBで表してみると、

hFE = IC / IB
= IC / ( IE - IC )
= ( IC / IE ) / ( 1 - ( IC / IE ) )
= hFB / ( 1 - hFB )

となります。

ここで、hFB = 0.995 とすると、

hFE = 0.995 / ( 1 - 0.995 )
= 199
≒ 200

となり、エミッタ接地の電流増幅率hFEは、約200倍という大きな値を取ることになります。

言い換えると、少ないベース電流IBで、200倍のコレクタ電流ICが得られるということになります。

一般的にhFEは、10~1000程度の値です。

この特性から、エミッタ接地は電子回路の分野において、広く利用されることになります。

実際に試してみよう!

トランジスタの構造や動作原理を理解したら、実際に回路を組んでみましょう。

実際にLEDが点灯する様子を見ることで、電流の流れ方がより具体的にイメージできます。

回路例

NPNトランジスタの電流増幅を確認できる回路です。

トランジスタを使ったLED点灯回路例

ベース端子(B)に小さな電流を流すことで、

コレクタ(C)からエミッタ(E)に大きな電流が流れ、LEDが点灯します。

これが「電流増幅作用」です。

ベース端子(B)に抵抗を介して電圧を加える
→ ベース電流が流れる
→ コレクタ-エミッタ間に電流が流れる
LEDが点灯

ベース端子(B)に抵抗を介して電圧を加えない(0V)
→ ベース端子(B)に電流が流れない
→ コレクタ-エミッタ間に電流が流れない
LEDが消灯

この実験で、トランジスタの「電流で電流を制御する」性質を体感できます。

必要な部品

ブレッドボードを使って、トランジスタの電流増幅を確認できる回路を組むための部品を紹介します。

NPNトランジスタ 2N3904

基本実験に最適な小信号トランジスタです。
ベースに流す小さな電流でLEDを点灯させることができ、電流増幅の原理を体験できます。

抵抗セット

330Ω〜10kΩの抵抗を使用して、トランジスタの動作確認できます。
1/4Wタイプで十分ですが、電流の大きな回路では1/2W以上を使うと安全です。

LEDセット

電流が流れると発光する部品です。
赤・黄・緑など複数色を用意しておくと、電流の違いによる明るさの変化を比較できます。

ブレッドボード 830穴

はんだ付け不要で部品を挿すだけで回路を組める基礎実験用のボードです。
抵抗を入れ替えたりして動作を確認できます。

ジャンパワイヤセット

ブレッドボード上で部品同士を接続するための配線コードです。
オス-オス/オス-メス/メス-メスの3種類があると実験の自由度が高まります。

USB 5Vブレッドボード電源モジュール

ブレッドボードに直接差し込み、安定した5Vや3.3Vを供給できます。
LED点灯やトランジスタの動作確認にちょうど良い電圧です。

デジタルマルチメータ(テスター)

ベース・コレクタ・エミッタ間の電圧や電流を測定することで、
実際に電流増幅が起きている様子を確認できます。

トランジスタはメーカーや型番によって ピン配置が異なる場合 があります。
また、耐えられる電圧や電流も製品によって違います。
実際に回路を組むときは、必ず データシートでピン配置や定格を確認してください

測定に便利なツール

電流や電圧を測定すれば、トランジスタの動作をより深く理解できます。

まとめ

トランジスタの構造と動作原理について解説しました。

電子回路初心者の方には勉強になったでしょうか?

また電子回路経験者の方も、普段トランジスタで設計するときに

トランジスタ内部の動きまで考えないですよね。

こういうのは時が過ぎていくとともに忘れていっていまうものだと思います。

本記事が少しでも参考になれば幸いです。

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トランジスタの構造と動作原理を理解できれば、電子回路の基礎理解が一歩前進です。

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おまけ:トランジスタ構造とIC内部の関係

今回学んだトランジスタの構造は、IC(集積回路)の内部にも無数に組み込まれています。

たとえば、論理回路(AND・OR・NOT)やオペアンプなどは、

基本的にはトランジスタを組み合わせて作られています。

トランジスタ単体ではスイッチや増幅として働きますが、

複数を組み合わせることで信号処理・演算・メモリ動作などを実現します。

トランジスタを1個ずつ理解する
→ 複数を組み合わせると回路になる
→ 無数に集まるとIC(集積回路)になる

このつながりを意識しておくと、電子回路の理解の幅が広がります。

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