- 太陽光発電の発電量や売電収入は、どうやって計算するの?
- シミュレーション方法を教えてください。
こんな質問にお答えします。
本記事を書いている私は、電気のプロ歴10年です。
太陽光発電のシミュレーション方法は、業者によって様々です。
そのため、業者によっては、
発電量のシミュレーションが大きくなり、
売電収入を高く見積もる可能性があります。
自分でシミュレーションできないと鵜吞みにするしかないですよね。
そうなると、
思っていたほど、売電収入が得られないなぁ
という事態になってしまいます。
しかし、本記事を読めば、
太陽光発電のシミュレーション方法
を知ることができ、
業者のシミュレーション結果と比較すること
ができるようになります。
5分で読めますので、ぜひ最後までご覧ください。
太陽光発電の計算方法
太陽光発電の計算式は、下記のとおりです。
(前略)
Ep = H × K × P × 365 ÷ 1
Ep:年間予想発電量(kWh/年)
H:設置面の1日当りの年卑近日射量(kWh/m2・日)
K:損失係数 = 約73%
(モジュールの種類や受講面の汚れで多少変る)
P:システム容量(kW)
365:年間日数
1:標準状態における日射強度(kW/m2)(以下略)
出典:「太陽光の恵みを子供たちが学び育むために P.6」(文部科学省)(https://www.nier.go.jp/shisetsu/pdf/taiyoukou.pdf)(2023年9月29日に利用)
ちょっと難しいので、計算式を
- 1日の発電量
- 年間の発電量
- 年間の売電収入
に分けて、解説します。
1日の発電量
1日の発電量は、
1日の発電量 = 1日の日射量 × 損失係数 × 太陽光パネルの容量 ÷ 1
で、計算できます。
1日の日射量
1日の間に、太陽から受けるエネルギー量です。
損失係数
パワーコンディショナーやケーブルなどでは、
エネルギーの損失があります。
その分を考慮した係数です。
例えば、
太陽から受けるエネルギー量:100%
パワーコンディショナーやケーブルなどの損失:27%
とすると、残ったエネルギーは
100% - 27% = 73%
となり、73%を代入して計算します。
太陽光パネルの容量
太陽光パネルで発電できる電気の量です。
例えば、太陽光パネルの容量が50kWであれば、
「50」を代入して計算します。
最後の「÷1」は日射強度です。
日射強度とは、
カンタンにいうと「太陽光の強さ」です。
「1」なので、計算には影響ありません。
年間の発電量
年間の発電量は、
年間の発電量 = 1日の発電量 × 365
で、計算できます。
年間の日数が365日だからです。
年間の売電収入
年間の売電収入は、
年間の売電収入 = 年間の発電量 × 売電単価
で、計算できます。
売電単価は、電力会社に電気を売るときの単価(価格)です。
太陽光発電のシミュレーション方法
実際に、以下の順序で
太陽光発電のシミュレーションを行います。
- 1日の日射量を求める
- 1日の発電量を計算する
- 年間の発電量を計算する
- 年間の売電収入を計算する
【1】1日の日射量を求める
日射量は、
NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)
のサイトにある
WEB版日射量データベース閲覧システム
から求められます。
1.NEDOのサイトにアクセスします。
2.「WEB版日射量データベース閲覧システム」をクリックします。
※「サイト利用について(著作権・リンクについて)」も内容を確認しましょう。
3.真ん中にある「年間月別日射量データベース(MONSOLA-20)」をクリックします。
4.左下にある「住所検索」をクリックします。
5.「緯度経度検索」のダイアログが表示されるので、
太陽光発電が設置されている場所の「住所」を入力し、
すぐ右にある「検索」をクリックします。
例えば、タイナビ発電所には、下記の太陽光発電所が紹介されてます。
住所:長野県
太陽光パネルの容量:41.25kW
売電単価:43.2円
今回は一例なので「長野県」だけ入力しますが、
実際は
長野県○○市◇◇町123ー1
のように、正確な住所を入力しましょう。
6.地図が拡大されて、
マップアイコンが出てくるので、
そのアイコンをクリックします。
1次メッシュが選択され、3次メッシュが表示されます。
7.「この地点のグラフを表示」をクリックします。
グラフが表示されます。
8.左上の「表示データ選択」で「角度指定」を選択します。
9.その下の「角度指定データの表示種類」では「任意の指定」を選択します。
傾斜角に
30
を入力します。
方位角は
0
のままにします。
10.グラフに表示された「平均」を確認します。
グラフの横軸には
1~12月、平均、冬、春、夏、秋
とあるので、この中の
平均
が求める日射量になります。
タイナビ発電所の長野県にある太陽光発電所では、
4.62
という日射量が求められました。
【2】1日の発電量を計算する
住所:長野県
太陽光パネルの容量:41.25kW
売電単価:43.2円
太陽光パネルの容量は
41.25kW
です。
損失係数を73%とすると、
1日の発電量
= 1日の日射量 × 損失係数 × 太陽光パネルの容量 ÷ 1
= 4.62 × 73% × 41.25 ÷ 1
= 3.3726 × 41.25 ÷ 1
= 139.11975 ÷ 1
= 139.11975 kWh
と計算できました。
【3】年間の発電量を計算する
1日の発電量が求められたので、年間の発電量を計算します。
年間の発電量
= 1日の発電量 × 365
= 139.11975 kWh × 365
≒ 50778kWh
という事態になります。
【4】年間の売電収入を計算する
住所:長野県
太陽光パネルの容量:41.25kW
売電単価:43.2円
太陽光発電所の売電単価は
43.2円
でした。
年間の売電収入は、
年間の売電収入
= 年間の発電量 × 売電単価
= 50778 × 43.2円
= 2193609円
≒ 219万円
と計算できました。
「過去の発電所」を例にしたので、
売電単価が「過去の単価」になっています。
シミュレーションの注意点と対策方法
シミュレーションには3つの注意点があります。
- 太陽光パネルは劣化する
- 正確な傾斜角と方位角を設定できない
- シミュレーションは完璧ではない
これらの注意点と対策方法について解説します。
太陽光パネルは劣化する
太陽光パネルが劣化すると、発電量が低下していきます。
しかし、これまで計算したシミュレーション結果は、
太陽光パネルの劣化を考えていません。
そのため、
1年ごとに0.5%の発電量が低下する
ことを想定した方が良いです。
例えば、シミュレーションの結果は
年間の発電量:50778kWh
年間の売電収入:219万円
でした。
1年目は劣化しませんので、
2年目から0.5%の低下を計算に入れます。
2年目の発電量
= 1年目の発電量 × (100% - 0.5%)
= 50778 × 99.5%
= 50524
2年目の売電収入
= 2年目の発電量 × 売電単価
= 50524 × 43.2円
≒ 218万円
3年目以降も同様に計算します。
3年目の発電量
= 2年目の発電量 × (100% - 0.5%)
= 50524 × 99.5%
= 50271
3年目の売電収入
= 3年目の発電量 × 売電単価
= 50271 × 43.2円
≒ 217万円
4年目の発電量
= 3年目の発電量 × (100% - 0.5%)
= 50271 × 99.5%
= 50020
4年目の売電収入
= 4年目の発電量 × 売電単価
= 50020 × 43.2円
≒ 216万円
このように5年目以降も計算していけば、
太陽光パネルの劣化を想定した
シミュレーション結果を得ることができます。
実際に0.5%も低下しなくても、
シミュレーションは0.5%ぐらいで考えるのが一般的です。
業者によっては、余裕をもって、
0.7%~0.8%の低下を想定しているところもあります。
正確な傾斜角と方位角は設定できない
NEDO 日射量データベース閲覧システム(MONSOLA-20) では、
太陽光パネルの「傾斜角」と「方位角」を、正確に設定できません。
傾斜角:10度ごとに設定
例)10度、20度、30度、40度
方位角:15度ごとに設定
例)0度、15度、30度、45度
例えば、
・傾斜角が25度の日射量
・方位角が20度の日射量
は設定できません。
例えば、傾斜角を25度でシミュレーションしたいなら、
30度と20度を求めて、
その間の値を「25度の日射量」と考えれば良いでしょう。
実際にやってみると、
長野県にある太陽光発電所では、
傾斜角 30度 → 日射量 4.62
でした。
傾斜角を変更すると、
傾斜角 20度 → 日射量 4.52
となります。
つまり、
4.62 と 4.52 の間の値 4.57
が傾斜角25度の日射量になります。
どうすれば良いでしょうか?
15度と30度の間は17.5度です。
長野県にある太陽光発電所では、
方位角 15度 → 日射量 4.58
方位角 30度 → 日射量 4.49
です。
これを直線で引くと、下図の通りになります。
方位角20度のときは、
4.55
と求められます。
シミュレーションは完璧ではない
今回のシミュレーション方法は完璧ではありません。
理由は3つあります。
・日射量は過去のデータである
・太陽光パネルの性能は考慮してない
・損失係数は人によって異なる
日射量は過去のデータである
NEDO 日射量データベース閲覧システム(MONSOLA-20)の日射量は、
過去のデータです。
(前略)
MONSOLA-20は、統計期間2010年~2018年の全国1kmメッシュ、
月平均の推定値を収録したデータベースです。
(以下略)
引用:NEDO 日射量データベースの解説書|国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(参照日2023年9月22日)
2010年~2018年のデータであり、最近のデータは反映されてません。
太陽光パネルの性能は考慮してない
今回のシミュレーション方法では、
太陽光パネルの容量で計算しています。
しかし、近年は技術がどんどん進んで
太陽光パネルの性能が上がってます。
そのことは考慮されてません。
損失係数は人によって異なる
今回は損失係数を73%で計算しました。
しかし、人によっては、
自分の経験に基づいて少し値を変えてます。
例えば、損失係数を80%で計算する人もいます。
これら3つの理由から
今回のシミュレーションは完璧なやり方というわけではありません。
どれだけ差が出るものでしょうか?
比較してみましょう。
「実際のデータ」と「シミュレーション」を比較
兵庫県西脇市に太陽光発電所があります。
メニュー → くらし → 環境・ごみ → 西脇市太陽光発電所が完成!
ここの「実際のデータ」を「シミュレーション」と比較します。
実際のデータ
まずは、発電実績を見てみます。
(前略)
(以下略)
引用:太陽光発電所の発電状況|兵庫県西脇市(参照日2023年9月22日)
シミュレーション
次に、シミュレーションします。
まずは、
NEDO 日射量データベース閲覧システム(MONSOLA-20)で、
住所を入力して、日射量を求めます。
日射量は
4.17
でした。
西脇市のホームページより、太陽光パネルの容量は
1398.08kW
です。
損失係数を73%とすると、
1日の発電量
= 1日の日射量 × 損失係数 × 太陽光パネルの容量 ÷ 1
= 4.17 × 73% × 1398.08 ÷ 1
≒ 4256 kWh
年間の発電量
= 1日の発電量 × 365
= 4256 kWh × 365
≒ 1553402 kWh
年間の売電収入
= 年間の発電量 × 売電単価
= 1553402 × 40円
= 60136072円
と計算できました。
比較結果
年間の売電収入を
「実際のデータ」と「シミュレーション」で比較します。
例えば、平成28年度の実際のデータは、
年間の売電収入:64,971,831円
なので、
差分(円)
= 平成28年度の実際のデータ - シミュレーション
= 64,971,831円 - 62,136,072円
= +2,835,759円
となります。
わかりやすくするため、差分を(円)→(%)に変換します。
差分(%)
= 差分(円)÷ シミュレーション × 100
= +2,835,759円 ÷ 62,136,072円 × 100
= +4.6%
これは
「実際のデータ」は「シミュレーション」よりも、+4.6%大きい
という意味です。
同様に、平成29年度も計算します。
平成29年度の実際のデータは、
年間の売電収入:71,307,282円
なので、
差分(円)
= 平成29年度の実際のデータ - シミュレーション
= 71,307,282円 - 62,136,072円
= +9,171,210円
となります。
差分を(円)→(%)に変換します。
差分(%)
= 差分(円)÷ シミュレーション × 100
= +9,171,210円 ÷ 62,136,072円 × 100
= +14.8%
このように令和4年度まで計算した結果が、下表になります。
【売電収入の比較結果(損失係数:73%)】
年度 | 差分(円) | 差分(%) |
28年度 | +2,835,759円 | +4.6% |
29年度 | +9,171,210円 | +14.8% |
30年度 | +6,093,660円 | +9.8% |
元年度 | +6,078,782円 | +9.8% |
2年度 | +5,565,510円 | +9.0% |
3年度 | +1,347,198円 | +2.2% |
4年度 | +5,462,786円 | +8.8% |
実際のデータが大きいですね。
しかし、損失係数80%だと、
どうでしょうか?
損失係数を80%で、再度シミュレーションすると
年間の売電収入 = 68,094,325円
となりました。
例えば、平成28年度は、
差分(円)
= 平成28年度の実際のデータ - シミュレーション
= 64,971,831円 - 68,094,325円
= -3,122,494円
差分(%)
= 差分(円)÷ シミュレーション × 100
= -3,122,494円 ÷ 68,094,325円 × 100
= -4.6%
となります。
同様に計算していくと、令和4年度までの結果は、下表のとおり。
【売電収入の比較結果(損失係数:80%)】
年度 | 差分(円) | 差分(%) |
28年度 | -3,122,494円 | -4.6% |
29年度 | +3,212,957円 | +4.7% |
30年度 | +135,407円 | +0.2% |
元年度 | +120,529円 | +0.2% |
2年度 | -392,743円 | -0.6% |
3年度 | -4,611,055円 | -6.8% |
4年度 | -495,467円 | -0.7% |
差分(%)が0.0%に近いですね。
損失係数80%だと、
ほとんど同じ結果になりました。
正確なシミュレーションまでは期待しない
今回の結果では、
損失係数73%のとき、
「シミュレーション」よりも「実際のデータ」がプラス
損失係数80%のとき、
「シミュレーション」と「実際のデータ」はほとんど同じ
となりました。
しかし、太陽光発電を始める前に、
損失係数80%のとき、
「シミュレーション」と「実際のデータ」はほとんど同じになる
ということは分かりません。
事前に73%でシミュレーションする可能性は十分あります。
「実際のデータ」がプラスになる場合、
思ったよりも売電収入は高かった!
となるので、問題ないかもしれません。
しかし「実際のデータ」がマイナスになった場合、
う~ん、思ったよりも売電収入は低かったなぁ・・・
となる可能性もあります。
つまり、今回の結果からは、
大きな差分はなかったが、
正確なシミュレーションまでは期待できない
と言えます。
「今回の方法でシミュレーションした結果」と、
「業者のシミュレーション結果」が異なるとき、
どう判断すれば良いでしょうか?
今回の結果で、
「実際のデータ」と「シミュレーション」の差分は、
30%や40%という大きな値ではありませんでした。
そのため、大きな差分がないことを確認すると良いでしょう。
どうすれば良いですか?
まず、一方的に
業者のシミュレーションが間違っている!
と決めつけるのはやめましょう。
今回のシミュレーション方法も完璧ではありませんからね。
もし、あまりにも差分が大きいようでしたら、
シミュレーション通りの発電量や売電収入が得られた実例を
業者に確認させてもらうと良いでしょう。
どこに依頼すれば良いのやら・・・、
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まとめ
太陽光発電のシミュレーション方法について解説しました。
計算方法やシミュレーションの実例、注意点とその対策方法について理解できたでしょうか?
本記事が少しでもお役に立てば幸いです。