電子回路シミュレータを初めて学習しようとしたとき、
このように考えたことはありませんか?
- 電子回路シミュレータを使って電子回路を効率的に学習したいけど、
Pspice、LTspice、TINA-TI、Microcap、SIMetrix/SIMPLIS・・・、
多くの電子回路シミュレータの中で、結局どれがいいの?
これから「電子回路シミュレータを学習する方」や「電子回路シミュレータの選定に迷っている方」向けに、
学習すべき電子回路シミュレータLTspiceについて解説します。
電子回路シミュレータなら、LTspiceを学習すべき理由
Spiceとは、米国で開発された電子回路シミュレータです。
Pspice、LTspice、TINA-TI、Microcap、SIMetrix・・・
これらは全てSpiceをベースとした電子回路シミュレータであり、
GUI、素子制限数、有償・無償などに違いがあるものの、
シミュレーションできる内容に大きな差はありません。
これらのSpiceシミュレータの中でLTspiceの特徴を上げます。
- 回路規模に制限がなく完全無償で利用できる。
- 多くの参考書が出版されており、情報が入手しやすい。
- フリーソフトではあるが、様々な電子回路のシミュレーションができる。
- フリーソフトではあるが、様々な解析方法を実行できる。
この中の「情報の入手性」について、
例えば、「電子回路シミュレータ LTspice XVIIリファレンスブック」という本を読むだけで、
インストール方法と操作方法を習得できます。
操作方法を調べるのに時間をとられると、肝心の「電子回路の学習」や「理論の検証」ができなくなるため、
電子回路シミュレータを利用する場合は、情報の入手がしやすいLTspiceをオススメします。
LTspice以外のSpiceシミュレータも、適材適所で使いこなすことが理想的だと思いますが、
いきなり複数のシミュレータを習得するには、時間がかかり、効率的ではありません。
まずは、情報の入手性の良いLTspiceからマスターするのが良いでしょう。
その後から、LTspice以外のシミュレータを学習しても遅くはありません。
ひとつのSpiceシミュレータを習得すれば、別のSpiceシミュレータを習得するのは容易になります。
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回路シミュレータLTspiceは様々な電子回路をシミュレーションできる
LTspiceでシミュレーションできる電子回路の事例を紹介します。
整流回路
半波整流回路のシミュレーションです。
V(ac24v)の信号(赤線)は、回路図上の「AC24V」の波形であり、
V(out)の信号(青線)は、回路図上の「OUT」の波形です。
コンデンサC1は、330uFよりも3300uFのときの方が、出力電圧V(out)が整流されていることを観測できます。
LED点灯回路
LED点灯回路のシミュレーションです。
電源電圧V1を0Vから6Vまで徐々に上げていったとき、
LED(D1:NSCW100)に流れる電流I(D1)を観測できます。
オペアンプ回路
オペアンプを使用したローパスフィルタ回路のシミュレーションです。
V(out)の信号(青線)は、回路図上「OUT」の周波数特性の波形です。
周波数1kHzのときから減衰していることが観測できます。
トランジスタ回路
トランジスタ増幅回路の一種である「電流帰還バイアス回路」のシミュレーションです。
V(in)の信号(赤線)は、回路図上「IN」の波形で、
V(out)の信号(青線)は回路図上「OUT」の波形です。
入力信号V(in)は10mVに対して、
出力信号V(out)が約120倍されていることが観測できます。
電源回路
定電圧回路のシミュレーションです。
V(out)の信号(青線)は、回路図上「OUT」の波形で、
赤線の信号は、電源効率の波形です。
縦軸が2つありますが、
左側の縦軸が、出力電圧V(out)[V]で、
右側の縦軸が、電源効率[%]です。
負荷電流I1を5mA~50mAまで変化させても、出力電圧5Vの変動は0.064V以下であることが観測できます。
また、電源効率は18%~43%であることが観測できます。
スイッチング電源回路のシミュレーションです。
V(out)の信号(青線)は、回路図上の「OUT」の波形で、
I(L1)の信号(赤線)は、インダクタL1に流れる電流の波形です。
縦軸は2つありますが、
左側の縦軸が、出力電圧V(out)[V]で、
右側の縦軸が、インダクタ電流I(L1) [A]です。
出力電圧V(out)は2.49V~2.53V、
インダクタ電流I(L1)は0.1A~0.4Aの範囲内で変化しており、
周期は1usecであることから、1MHzでスイッチングしていることが観測できます。
パルス生成回路
タイマーICを利用したパルス生成回路のシミュレーションです。
V(out)の信号(青線)は、回路図上の「OUT」の波形です。
出力電圧V(out)は、0.0Vと5.0VでON/OFFしているのことが観測できます。
1周期が25usなので、40kHzでON/OFFしていることが分かります。
以上のように、LTspiceはフリーソフトではあるものの、
様々な電子回路をシミュレーションができることがわかります。
「電子回路シミュレータLTspice実践入門」という本を読めば、
整流回路やLED点灯回路、トランジスタ回路はシミュレーションできるようになります。
回路シミュレータLTspiceは様々な解析方法を実行できる
基本的な解析方法としてDC解析、AC解析、トランジェント解析があります。
これらは、先ほど紹介した「電子回路シミュレータ LTspice XVIIリファレンスブック」という本でも
説明されているため、簡単に説明します。
DC解析(直流解析)
「テスター」や「デジタルマルチメータ」のように、直流の電圧と電流を観測できます。
LED点灯回路、定電圧回路のシミュレーションは、この解析方法で実行しています。
AC解析(小信号解析)
「ネットワークアナライザ」のように、周波数特性を観測できます。
オペアンプを使用したローパスフィルタ回路のシミュレーションは、この解析方法で実行しています。
トランジェント解析(過渡解析)
「オシロスコープ」のように、時間変化に対する信号を観測できます。
半波整流回路、トランジスタ増幅回路、スイッチング電源回路のシミュレーションは、
この解析方法で実行しています。
その他の解析方法として、モンテカルロ解析、パラメトリック解析、温度解析があります。
モンテカルロ解析
電子部品には「ばらつき」があります。
抵抗であれば「1kΩ±1%」や「1kΩ±5%」のように、必ず「ばらつき」が存在します。
この部品の「ばらつき」が、出力信号に与える影響を観測できます。
先程のトランジスタ増幅回路の一種である「電流帰還バイアス回路」において、
モンテカルロ解析を実行したシミュレーションです。
R1、R2、Rc、Reの「抵抗のばらつき」を±5%に設定し、モンテカルロ解析を実行すると、
「抵抗のばらつき」の影響により、出力信号V(out)がばらつくことが観測できます。
部品のばらつき計算をするには、品質工学あるいは統計学の知識が必要になり、
出力信号に与える影響を机上計算で求めるには、多くの労力と時間を要します。
モンテカルロ解析を実行すれば、簡単に部品の「ばらつき」が、
出力信号に与える影響を観測することができます。
パラメトリック解析
パラメータを変化させたときの「出力信号の変化」を観測できます。
先程の半波整流回路において、パラメトリック解析を実行したシミュレーションです。
C1のコンデンサを330uFから3300uFまで、330uFステップで変化させたとき、
出力信号V(out)が、徐々に整流されていることが観測できます。
実際の測定では、パラメータが異なる状態で、同時に測定するのは困難ですが、
電子回路シミュレータであれば、同時に実行でき、シミュレーション結果を比較することができます。
温度解析
温度パラメータを変化させたときの「電圧・電流の変化」を観測できます。
先程のLED点灯回路において、温度解析を実行したシミュレーションです。
温度パラメータを-25℃、+25℃、+75℃と変化させたとき、
D1に流れる電流I(D1)が変化しているのが観測できます。
実際に測定する際は、実機を恒温槽に入れて周囲温度を変動させるため、時間と手間がかかりますが、
電子回路シミュレータだと、温度解析を実行するだけで「電圧・電流の変化」を観測することができます。
以上のように、LTspiceはフリーソフトではあるものの、多くの解析方法を実行できることがわかります。
「電子回路シミュレータLTspice入門編」という本を読めば、
モンテカルロ解析やパラメトリック解析の方法を習得できます。
LTspiceをマスターして電子回路の学習効率アップ
LTspiceを使えるようになると、理論との比較検証ができるようになります。
例えば、上図はオペアンプを用いた非反転増幅回路のシミュレーションです。
理論的に考えると、
1+(R2/R1) = 1+(10kΩ/10kΩ) = 1+1 = 2倍
になります。
シミュレーション結果をみると、
SIN波の入力信号(IN)は±1Vp-p、出力信号(OUT)は±2Vp-pであり、2倍となっていることから、
理論値と一致することが分かります。
このように、電子回路の理論を検証することに役立つので学習効率がアップします。
また、電子回路の動作をイメージしたり、既存の電子回路図を読み解くことにも役立つでしょう。
ぜひ電子回路シミュレータLTspiceを活用してみてください。
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