- Seeed FusionPCBという基板メーカって、実際どうなの?
- Seeed FusionPCBに注文したときの価格や送料、納期を知りたいです。
- Seeed FusionPCBの注文方法を教えてください。
こんな疑問にお答えします。
本記事を書いている私は電子回路設計歴10年です。
普段、電子回路を設計した後は、基板メーカに「プリント基板を作ること」を依頼しています。
しかし、プリント基板は価格が高いですね。平然と数万円を超えたりします。
安く作りたい方は海外メーカを利用すると良いです。
今回、Seeed FusionPCBという基板メーカを利用しましたので、レビューします。
なお、回路CADは、KiCadを使用しました。
5分程度で読めますので、ぜひご覧ください。
Seeed FusionPCBを使ってみた感想
結論、全く問題ありません。
しっかりとプリント基板が作れました。むしろ高品質に感じます。
詳しくは後述しますが、実際に基板を作ってみて問題なく動作しています。
プリント基板を作りたいときは、Seeed FusionPCBを利用すると良いでしょう。
Seeed FusionPCBにおける実際の価格や送料、納期
Seeed FusionPCBの価格
100mm × 100mm の基板を10枚つくってみると、価格は以下の通りでした。
まさかの約550円。破格のお値段ですね。
国内のプリント基板メーカを利用すると、3万円ぐらいします。
ただし、これは二層基板の場合です。四層基板はどうでしょうか?
約5500円ですね。一見、高くなったように見えるかもしれませんが、
国内のプリント基板メーカで四層基板をつくると、5万円以上します。
四層基板も、破格すぎるお値段です。
つまり、安く作りたいときは、Seeed FusionPCB を利用すると良いですね!
Seeed FusionPCBの送料と納期
送料と納期は以下の通りです。
送料はドル単位で表示されていますが、
右側の赤枠に『二層基板 + 送料』の合計金額が円単位で表示されています。
この情報をもとに、配送業者ごとの納期と送料をまとめました。
配送業者 | 配送日数 | 二層基板 + 送料 の 合計金額 |
OCS | 2~4営業日 | 2524円 |
DHL | 1~3営業日 | 2648円 |
FedEx | 4~8営業日 | 2778円 |
Japan Direct Line | 5~9営業日 | 2140円 |
生産時間(基板を作る時間)が3~4営業日となっているので、
『配送日数 + 生産時間』が実際の納期になります。
四層基板は、生産時間が5~6営業日なので少し納期が長くなりますね。
六層基板の生産時間は、8~10営業日です。
また、配送業者は注文時に選択するのですが、お好みで選んで良いと思います。
迷った場合は、
すぐに基板がほしい → 配送日数が一番短い【DHL】
コストを少しでも下げたい → 送料の一番安い【Japan Direct Line】
というように選ぶと良いでしょう。
多少、納期は変動すると思いますので、余裕をもって注文することをオススメします。
Seeed FusionPCBの注文方法
まずはガーバーファイルを用意する
プリント基板を作るには、ガーバーファイルが必要です。
ガーバーファイルとは、簡単にいうと、プリント基板の設計データみたいなものです。
CADから作成でき、配線パターンやシルクなど、基板をつくるために必要な情報が記載されています。
使用するCADによって、作成方法が違いますので、こちらを見ながらガーバーファイルを作成してください。
参考記事:ガーバーファイルを出力する方法
基本的に、この記事に従ってファイルを作成すれば大丈夫です。
注意点としては、ドリルデータも必要になります。
ガーバーファイルの作成と同時にドリルデータも作成してくれますが、CADによっては、別々に作成します。
例えば、KiCadなど。
しかし、ドリルデータの作成も上記の参考記事に書いてありますので、
記事の内容に従って作成すれば大丈夫です。
なお、KiCadを使用している方は、以下にご注意ください。
ガーバーファイル作成時 → 「Protelの拡張子を使用」をチェック
ドリルデータ作成時 → 「PTH とNPTH 穴を一つのファイルにマージ」をチェック
これらも参考記事に記載がありますので、見落とさないようにしましょう。
作成したガーバーファイル( + ドリルデータ)を、
zip あるいは rar形式の圧縮ファイルにまとめれば、準備完了です。
Seeed FusionPCBで実際に注文する
以下のリンクをクリックすると、Seeed FusionPCBでプリント基板情報の入力画面が表示されます。
まずは「ガーバーファイルを追加」をクリックして、
用意したガーバーファイル(zip あるいは rar形式の圧縮ファイル)をアップロードします。
アップロードが完了後、『ガーバービューア』を選択すると、
仕上がりのイメージが確認できますので、気になる方は参考に見てみましょう。
ガーバーファイルの追加が終わったら、プリント基板の情報を1つずつ選択していきます。
【材質】
「FR-4」が一般的です。
特にこだわりがなければFR-4で良いでしょう。気が向いたら、他の材質でも作ってみてください。
【層数】
用意したガーバーファイルと同じ層数を選択します。
一般的には「二層」か「四層」が多いです。回路の規模が大きい場合は「六層」もありですね。
【寸法】
用意したガーバーファイルと同じ寸法(縦横)を入力します。
間違えないようにご注意ください。
【基板枚数】
作りたいプリント基板の枚数を入力しましょう。
このとき少し多めに作っておくことをオススメします。
5枚欲しいときは、10枚など、
うっかり壊してしまったときのために多めに作ると良いでしょう。
用意したガーバーファイルと同じ数を選択します。
基板を1種類つくるときは「1」ですが、
2種類つくるときは「2」になります。
よくわからない方は、こちらをどうぞ。
※リンク先の「元の位置に戻る」で戻ってこれます。
【板厚】
「1.6」が標準です。
特に理由がない限りは、「1.6」にしておくのが無難です。
【レジスト色】
「緑」をオススメします。
余談ですが、仕事で緑以外を提案したら、生産担当者に
「検査工程に影響出るから却下」と言われたことがあります。
「緑」にしておいた方が、後々、面倒なことにならないでしょう。
個人の電子工作なら何色でも良いですけどね。
【基板の表面処理】
一概にこれが良いとは言い難いのですが、
コストを抑えるなら半田レベラーですね。
「有鉛半田レベラー」と「鉛フリー半田レベラー」がありまして、
環境や健康に配慮するなら「鉛フリー半田レベラー」の方が良いです。
ちなみに、「基板の表面処理」が分からない人に解説しますと、
表面処理とは、むき出しの銅箔(金属)をメッキすることです。
電子部品を基板に半田づけするとき、基板のパッドに部品を乗せて半田付けします。
この基板のパッドは銅箔でして、むき出しにしておくと酸化してしまい、
半田で上手にくっつけられず、はんだ不良の原因になります。
このようなことを防ぐために、メッキで表面処理する必要があります。
【最小ソルダレジスト ダムの幅】
「0.4mm」を選択します。これは基板のパッド間の距離です。
なるべく距離を取った方が、はんだ不良(はんだブリッジ)を防ぐことができるので「0.4mm」が良いです。
しかし、用意したガーバーファイルで、0.4mm未満のパッド間がある場合は「0.1mm」を選択します。
【銅箔厚】
「1oz.(1オンス)」が一般的です。
銅箔厚は、配線パターンなどの厚みのことで、1オンス = 35um が一般的です。
【最小穴径】
用意したガーバーファイルと同じ最小穴径を選択します。
一般的には「0.3mm」が多いですが、0.3mmよりも小さい穴径がある場合は、
その最小穴径に合わせて「0.2mm」「0.25mm」を選択してください。
【最小パターン幅/パターン間隔】
用意したガーバーファイルと同じ最小パターン幅/パターン間隔を選択します。
一般的には「6/6mil」が多いですが、
6mil = 0.1524mmよりも小さい幅のパターンやパターン間隔がある場合は、
その最小パターン幅/パターン間隔に合わせて「4/4mil」「5/5mil」を選択してください。
【端面スルーホール】
用意したガーバーファイルと同じ方を選択します。
一般的には「なし」が多いですが、
基板の端にスルーホールを配置している場合は「あり」を選択します。
【インピーダンス制御】
「なし」が一般的です。
EthernetやUSBのような高速通信は、
配線パターンのインピーダンスを制御しないと通信波形が崩れてしまいます。
つまり、EthernetやUSBのような高速通信を使用している場合は「あり」になります。
各項目の選択が完了したら、画面右側の「カートに追加」をクリックします。
下記のような画面がでてくるので「確認」をクリックします。
画面右上の「カートマーク」をクリックします。
または「カートマーク」にカーソルを合わせると、
「お支払いに進む」ボタンが出てくるので、そちらをクリックしても良いです。
(どちらでも大丈夫です)
ショッピングカートの画面が表示されますので、「安全にお支払い」をクリックします。
すでにアカウントをお持ちの方は、メールアドレスとパスワードを入力してログインします。
アカウントをお持ちでない方は、新規ユーザ登録をクリックして、
メールアドレスとパスワードを入力し、ユーザ登録します。
ショッピングカート画面に戻りますので、もう一度「安全にお支払い」をクリックします。
英語またはローマ字で配送先の情報を入力します。
配送業者を選択します。また、今度は日本語で配送先の情報を入力します。
お支払方法を「PayPal」「クレジットカード」から選択します。
最後に画面右側の「お支払い手続きに進む」をクリックします。
完了したら、以下の画面になります。
お疲れさまでした!
補足:面付けについて
面付けを簡単にいうと、作りたい基板の「種類の数」です。
例えば、1つの製品の中に、基板Aと基板Bがある場合、2種類の基板を作る必要があります。
基板Aと基板Bの寸法を、100mm × 100mm とすると、
大元となるプリント基板の大きさは、もっと大きいです。
この大元となるプリント基板に、100mm × 100mm の基板を敷き詰めて配置します。
このように作成した後、大元のプリント基板から切り取り、基板Aと基板Bが出来上がります。
基板Aのみ作成する場合は、基板の種類が1つなので、面付けは「1」です。
このとき、基板Bは別で注文して作成することになります。
基板Aと基板Bを作成する場合は、基板の種類が2つなので、面付けは「2」です。
このとき、基板Aと基板Bを一つのガーバーファイルになるようにCADで設計する必要があります。
別々にガーバーファイルを用意するのはNGです。
Seeed FusionPCBでKiCadを使って基板を作りました
実際にFusionPCBで基板を注文してみました。こちらが届いたものです。
左側の黄色い袋に、右側の基板が入っています。
基板が届くまで、現在の注文状況を確認できるのでとても安心でした。
今回、注文してから手元に届くまで7営業日でした。予定通りですね。
実際の基板はこんな感じ。品質は良い印象です。
電子部品をはんだ付けして、動作確認しました。
左:Analog Discovery 2
真ん中:Arduino Due
右:FucionPCBで作った基板
FucionPCBで作った基板は、増幅回路の基板です。
Arduino Dueで信号を発生し、増幅回路の基板で信号を増幅しています。
その波形をAnalog Discovery 2で観測しました。
無事に信号を増幅できました。作った基板はちゃんと動作していますね。
ぜひSeeed FucionPCBを利用してみてください!
Seeed FusionPCBのデザインルールについて
なお、KICadで発注する際には、以下のリンク先でデザインルールの確認を行いました。
参考にしてください。
Seeed FusionPCBの実装サービスはOPLがオススメ
Seeed FusionPCBでは、電子部品の実装サービスも実施しています。納期は15~25営業日です。
このとき、OPL(Open Parts Library)を利用すると納期が5~7日程度になり、とても短くなります。
OPLを簡単に説明すると、Seeed FusionPCBが所有している電子部品のことです。
所有している電子部品を使用すれば、電子部品を調達する時間を削減できるため、短納期を実現できます。
Seeed FusionPCBが所有している電子部品の一覧は、以下のリンク先で確認できます。参考にどうぞ。
Seeed FusionPCBのまとめ
今回は、プリント基板メーカ Seeed FusionPCB について解説しました。
少しはプリント基板の作成に役立つことができたでしょうか?
プリント基板は、価格が高いイメージがありましたが、随分と安く作れるようになったものです。
本記事が少しでもお役に立てば幸いです。